中韓への「片想い」をどう解決するか --- 岡本 裕明

アゴラ編集部

日中関係が冷めています。中国に進出する日系企業からは悲鳴が上がり、雑誌では「プラスワン」と称するバックアッププランを目にする機会も増えてきました。一方でアメリカ政府からは日中関係の悪化に懸念を示し、「仲介」が行われようとしています。


不思議なもので日本と中国の政府当事者同士は強硬姿勢を示す一方で、両国間の関係改善のための具体的対策は十分にとっているとは言えない状況です。そもそも双方とも政府が動きにくい状況にあるということがあるでしょう。中国サイドは11月に習近平氏が国家主席に選ばれるとしても体制がスタートするのは来年3月の全国人民代表大会。つまりあと半年近くは党内調整などでフリーダムではないということです。

日本もいつあるかわからない選挙ですが、野田ー谷垣の密約が安倍総裁により暴かれた内容からすれば来年の予算には手をつけないといっている訳ですから今年の解散がありそうにもみえます。つまり、双方の国とも政府レベルでは動きが取りにくい状況の中、放置すればますます悪化する懸念もあると見たのがアメリカではないでしょうか?

在中国日本国大使の丹羽宇一郎氏が講演で「過去と次元が違う」と述べています。丹羽大使に関してはいろいろ取りざたされましたが民間時代を含め中国に長く滞在していたという中国通である観点からすれば氏の発言には重みがあると捉えるべきではないでしょうか?

ではどこでボタンを掛け違えたのか、という質問があるとすれば私はもともと中国人は日本人が好きではないというスタンスから一つも変わっていないのではないかと感じます。多分、同じことは韓国でも言えると思います。

1996年に発刊されたある本を読んでいましてその中で中国人の青年が「中国人は日本には興味あるけど日本人はずっと好きではない」と発言しています。理由は言うまでもなく先の戦争が直接的引き金でしょうけど、そうとも限らないこともあります。

それは中華思想(華夷秩序)であり、朝鮮が小中華であり、日本は野蛮な国だと長年の思想として組み込まれてきたことが大きいのではないでしょうか? 韓国でも先の植民地支配がすべてかといえば案外、豊臣秀吉の時代にまで逆戻って不満を述べたりするのです。

つまり、思想的に一定のエスタブリッシュがある日中関係に於いて形成は逆転しにくく、日本人はいつまでたってもポピュラリティのない人種になっているように感じます。

一方で日本の製品、商品、技術、ノウハウ、知識は喉から手が出るほど欲しいのです。だから大挙して日本から中国に進出した企業は美味しそうな匂いに釣られて引き込まれたともいえます。では中国で日本企業はなぜ成長しにくいかといえば一つに日本企業に於いて中国人の幹部登用の道が限定されている点を上げたいと思います。これは二つの問題点があるのではないでしょうか?

1. 中国人が日本人に使われているという点で思想に反すること
2. 日本の商品に興味があるのであってそれを日系企業の社員として水平展開しにくいこと (商品ノウハウや技術を取得し、自分でビジネスをする足がかりにするチャンスを狙う人は多いはずです)

中国では知識層は日本との関係について冷静な目で見ているとされています。しかし、大衆パワーの強さは近年の革命で知識層の見地が無残に引き裂かれたことを証明しています。

日本人が海外進出する際に考えなくてはいけないのはやはり歴史と民族問題だと思います。恋愛で言う「片思い」がこの状況を言い当てているのではないでしょうか? その点、東南アジア方面では今のところうまく立ち回っている気がいたします。

個人的には日中、日韓の長期安定的関係に懸念を感じないわけにはいきません。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年10月24日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。