政治家もエコノミストも日銀を責めて責めて攻めまくるのが大好きなようだが、その原因は日銀が単に嫌いだとか、意地悪だとか、どうもそういうことではなさそうだ。
現代の経済に関する、単純で根本的な誤解に基づいているようだ。
私は頭が悪いので、ようやく先日の政府・日銀の共同文書を見てわかった。
私が阿保だった。
デフレ脱却に向けた取組について、と題する、日銀と政府の連名の文書の、政府の発言(?)の部分の後半に以下のようにある。
政府は、「日本再生戦略」(平成24年7月31日閣議決定)に基づき、平成25年度までを念頭に、「モノ」「人」「お金」をダイナミックに動かすため、規制・制度改革、予算・財政投融資、税制など最適な政策手段を動員する。
ははあ。
そう間違っていたのか。
古いエコノミストや実体経済を見たことがない証券市場関係者の言うことを真に受けていたのか。
なるほど。
間違いはここにある。
「モノ」「人」「お金」をダイナミックに動かす
そんなことをしても景気は良くならない。経済は良くならない。
ははあ。
それで、金融緩和して、お札を刷りまくって、お金をぐるぐる回せばいいと思っていたのか。
お金をぐるぐる回して良くなるのは、金融商品のバブルだけである。キャッチボールが頻繁に行われ、どんどん上がっていく。地上げの論理と同じで、売るときは買った値段に上乗せするから、取引が増えれば、それもスピードが速いほどバブルが膨らむ。それは正しい。
だから投資家や証券市場関係者が、お金をぐるぐる回せ、というのは自己利益にかなっている。
しかし、実体経済はそれではよくならない。
本当は潜在的な成長軌道が高い水準にあり、同時に、過度に将来に不安を抱いて、不必要に自己防衛のためにお金を貯め込んでいる場合はそうだろう。そうでない限り、お金をぐるぐる回しても、それは実体経済には回らず、金融市場でバブルに回るだけだ。
いや、おまえの言う、そうでない限り、と言っているとおり、現在は、そういう状況だから、お金をぐるぐる回すべきだ、とまじめに言う人がいるかもしれない。確信犯の投資家と違って、こちらは本当に誤りに気づいていない。
たとえ、高齢者などが過度に預金を貯め込んでいても、経済が潜在的に成長力があれば、預金を得た銀行はばんばん融資する。銀行だって馬鹿じゃない。いや銀行はエコノミストや政治家よりは経済の実態を分かっている。
だから、融資しないのだ。
海外に融資が増えるかもしれない。それを今回の日銀の政策、「貸出支援基金」は許容しているが、そのような融資が起こっても、国内の成長に資するがどうかは案件次第だ。
それはともかく、日銀も民間銀行もわかっている。
お金をぐるぐる回しても、国内景気は、実体経済はよくならない。
潜在成長力を高めない限り。
それはお金をぐるぐる回しても起きない。
日銀も銀行も分かっている。
それだけのことだった。
彼らの誤りの原因を分かっていなかったのは、私だけだったのだろう。
馬鹿だった。
すまぬ。