「八重の桜」が“満開”になる予感

新田 哲史

先日新宿を飲み歩いていたら駅東口に「八重の桜」の広告が登場していた=写真=。紅白が始まる前なのに、来年の大河ドラマの話を取り上げるのは鬼じゃなくても笑われそうですね(苦笑)。ただ「八重の桜」は予告編を観た時にビビッと来るものがあって、雑誌やウェブ等で関連情報を当たっていく程、大ヒットもあるんじゃないかと予感が強くなってきた。試写会に参加した記者に知り合いもいないし、予想も外れると恥ずかしいけど、「徳川家康」(1983年)を小学2年で観て以来、全作品を見てきた大河ファンとしては敢えて占ってみたいと思う。


●傾向と対策(?)~歴代大河の視聴率から
とはいえ、全く根拠がない「占い」を書くのも難なので、過去の大河ドラマのヒット傾向を基に考える。歴代作品の視聴率データ(関東地区)はビデオリサーチ社のサイトを見ていただきたい。データを勝手に転載すると怒られるそうなので、詳細な数字を書くのは自重するが、別タブで参照しながらお読みいただければと思う。

視聴率の一つ目のポイントは「反動」だ。今年「平清盛」が全期間の歴代最低を更新したが、その前のワーストは「花の乱」(94年4~12月)だった。その翌年、「吉宗」で視聴率は大幅に回復する。「花の乱」は室町中期の動乱を映像化した野心作であったが、「平清盛」の失速要因と同じく権力闘争に絡む人物関係が複雑だった。「吉宗」は一転、ジェームス三木さんの明るいタッチの脚本で、御三家・紀州藩の部屋住み四男坊が将軍に上り詰め、改革を行う一代記。まあ分かりやすいお話ですよね。こうした反動は何度かあったことを踏まえた上で「八重の桜」はどうか?最初に描かれる時代は幕末だ。戊辰戦争は「旧幕府VS新政府」と対立構図ははっきりしている。後は八重の成長過程という、過去のテレビドラマであまり描かれなかった視点から新しさを出せばいいだろう。

二つ目はその「幕末」。かつて大河では「幕末ものは当たらない」という“定説”があった。「竜馬がゆく」(68年)も苦戦したし、「翔ぶが如く」(90年)も前年の「春日局」より大幅に数字を落とした。これがトラウマだったのかNHKは幕末ものを以後、7年間見送った経緯がある。「八重の桜」もそれが不安材料になるが、近年は「篤姫」「龍馬伝」がヒットして“定説”が覆っている。「ドクターX」の記事でも触れたように「ドラマは社会の鏡」。「竜馬がゆく」は高度成長期、「飛ぶが如く」はバブル絶頂期の放送だった=表参照=。「日本が追い込まれている」現在の世相の方が幕末にシンパシーを抱きやすいのだろう。ま、エンタメ専門家風のテクニカルな解説を加えるなら、「篤姫」のヒットは民放の「大奥」ブームに乗った分あるし、「龍馬伝」は孫さんが毎週ツイッターで吠えて話題になっちゃった(笑)のもあるでしょう。

●脚本、配役は期待大
さて作品そのものに目を向けると、脚本は山本むつみさん。「ゲゲゲの女房」で低迷気味だった朝ドラを“蘇生”した実績を持つ。そして主演は綾瀬はるかちゃん。彼女自身のチャーミングな魅力もあるが、同じ幕末を舞台に大ヒットした「JIN~仁~」(TBS系)でヒロインを演じており、JINの固定客がある程度、付いてくるだろう。八重の兄、山本覚馬役の西島秀俊さんを始め、脇を固める配役も中々、期待を持たせてくれる。個人的には、朝ドラ「カーネーション」でブレイクした綾野剛さんが、会津藩主・松平容保をどう演じるかに注目している。幕府への忠義心が強すぎ、融通が利かない。そんな殿の役は、綾野さんのクールで繊細なイメージがハマりそうだ。

●2013年、ドラマを取り巻く世相は?
「八重の桜」が放送される2013年は、どんな年になるだろう。視聴者心理に影響する世相から2つのキーワードで考えてみよう。まずは「復興」。NHKは福島を応援するため、他の作品から題材を差し替えたそうで、その思惑通り、復興が少しでも進むように期待をしたい。番組関連で言えば、会津若松市以外の地域への観光効果をどう波及させるかが、福島は広いので知恵の絞りどころだろう。2つ目は「女性」。日本は昨秋、経済再建に向け、IMFから女性の労働力活用を勧告されるなど女性への期待感が社会的に強まっている。八重の異名“ハンサム・ウーマン”は、なでしこジャパンを彷彿とさせるではないか。綾瀬はるかさんが熱演で時代を切り開く女性像を提示できれば、そんな今の世の中の支持を得られるのではないだろうか。「八重の桜」が“満開”になると期待を込めながら、書き納めます。

※本年は、アゴラ、ブロゴスで拙稿をお読みいただき、ありがとうございました。色々な反応がうかがえ大変参考になりました。来年も宜しくお願いします。それでは皆様良いお年を。

新田 哲史(にった てつじ)
メディアストラテジスト