遅すぎた日銀の金融緩和は危険水域へ? --- 岡本 裕明

アゴラ

アメリカ経済の話題ですが、まず、今日金曜日に発表された12月の雇用統計は想定内の155,000人増、失業率は変わらずで市場の反応は特にありませんでした。ただ、ネット15万人以上の増を維持するのは中期的に失業率を低下させるほか、今回の統計内容からは製造業と建設業で強い回復が見られることからアメリカの内製化と不動産市況の回復を裏付けるものとなっています。アメリカの景気を不安視するメディアや専門家も多いのですが、基本的にはプラスのベクトルの中での心配事と考えてよろしいかと思います。


むしろ、この雇用統計よりびっくりしたのがFOMCの12月議事録。それによると定例会議の中で長期的な金融緩和の効果の有無について委員から賛否両論が出ており、アメリカの景気次第では金融緩和からの出口論が出てくる可能性が取りざたされています。12月のFOMCの声明では失業率が6.5%まで低下するまで金融緩和を続ける、と発表され、新たなる指針として注目されましたが、会議ではやはりそれなりの議論があったようです。

市場はこの議事録の発表を受け、これ以上の金融緩和はなく、場合によりその政策変換時期は予想より早い時期に来るのではないかと受け止められ、金など金利敏感な商品は売られました。ちなみに私の2013年びっくり大予想のひとつに「アメリカにおいてQE4はない」というのがあるのですが、基本的にはその方向で進んでいると見てよいと思います。

アメリカでは景気回復の基調が雇用統計を通じても少しずつですが改善方向に向かっており、こちらのほうは着実な感じがいたします。自動車販売も昨年は1,449万台で今年も1,500万台程度はいけるだろうと見込まれています。つまり、消費は着実に回復していると思われ、昨日も書きましたとおり、住宅も底打ちしています。

問題はやりすぎた金融緩和の後始末をどうするか、ということかと思います。以前、このブログで書いたと思いますが、リーマンショック以降、過度の金融緩和で輪転機を回し続け結果として大量のドル紙幣がどこかに存在するわけですが、幸いにしてか、或いは策略的にか、欧州でも金融危機が生じて結果として金融緩和をしました。多分、日本における金融緩和は安倍首相のプレッシャーのみならず、アメリカからの意向もあるような気がいたします。いわゆる主要通貨がそろって金融緩和をしないと足並みが揃わず、弊害が生じるということのように思えるのです。

で、日本は遅すぎた金融緩和をせっせとしているわけですが、どうもこれ以上続けるのは副作用が生じる気がしております。円安に振れている原因は勿論安倍首相の日銀への強い介入が主因なのですが、海外での為替ニュースからはセーフヘイブンである円をはずす動きという表現が目に付き始めているのです。つまり、ドル買い対する安心感で今までしょうがなくて買っていた円を売り、ドルに切り替えると言ったらわかりやすいでしょうか?

私には為替市場では変化が起きつつあると思います。よって、日銀がこれ以上の金融緩和を推し進めるより市場をコントロールする動きに変えていく必要がある気がします。一方的な金融緩和は危険な領域に入ってきたというのが私のこのところ感じていることです。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年1月5日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。