的外れな最低賃金論争 --- 古舘真

アゴラ

昨年の選挙で維新の会が掲げた「最低賃金廃止」という選挙公約が大きな話題となったが、当ブログでも最低賃金はよく話題になる。

世間では「最低賃金廃止は弱者切り捨てに繋がる鬼の様な政策」という見方が一般的だ。

しかし、必ずしも収入の高くない非正規労働者である私としては維新の会の掲げた公約は必ずしも弱い者苛めとは言えないと思うので個人的見解を詳しく述べる。


当ブログの「 内田樹氏の知らない最低賃金制度」で池田信夫氏が内田樹氏の最低賃金論を痛烈に批判しているが、

最賃がすでに雇われている労働者の賃金を上げる一方で、労働市場から締め出されている人々の雇用を奪うことは実証的にも明らかだ。

というのはその通りだろう。

最低賃金だけ上げさせて行政が労働者に対しても企業に対しても一切支援しないのであれば、弱い労働者が切り捨てられる事になり、それこそ鬼の様な制度と言わざるを得ない。

昨年のTV討論会で共産党の志位氏が下記の様な発言をしている。

日本共産党は中小企業に手当てをしながら時給千円以上へと大幅に引き上げて、「働く貧困層」をなくしていこうと訴えています。

ここで肝心なのは「中小企業に手当てをしながら」という発言だ。

既に述べた様に労働者に対しても企業に対しても何の支援もせずに最低賃金だけを上げれば単なる弱者切り捨てになるので共産党としてはそういう発言になったのだろう。

しかし、ここで素朴な疑問が発生する。

最終的には低賃金労働者を支援する事を目的としているのだから、労働者自身を行政が直接支援するという方法もあるし、最低賃金は必ずしも上げなくてよいのではないか?

維新の会の主張が正にそれに当たるだろう。

共産党と維新の会の差は企業を間接的に支援するか労働者を直接支援するかという違いであり、維新の会の主張が必ずしも弱者切り捨てとは言えないと思う。

共産党案と維新案のどちらが正しいかについては私は分からない(もしかすると両方とも間違っているかもしれないが)。

労働者を直接支援するのと企業を間接的に支援する政策のどちらがより不正が発生しづらく公平か或いは効率的かという観点で考えるべきなのに「右か左か」、「正義か悪か」という対立の構図で捉えられる事が多い。

最低賃金問題と並んで「非正規労働を廃止して正規労働の比率を高めろ」という主張も意図と正反対に失業者を生み出して更に格差と貧困が拡大し兼ねない。

それについては当ブログの「派遣労働者の素朴な疑問-無視される派遣労働者の声」に記したので興味のある方は是非読んで頂きたい。