原子力規制委員会は「活断層の上に原発の重要施設を設置してはならない」ことなどを明文化した新安全基準の骨子素案を発表した。このニュースを聞いて、「あれ?今でも活断層の上に建てるのは禁止じゃなかったの?」と思う人がいるだろう。規制委員会があちこちで穴を掘って活断層をさがしているのは何だろうか。
現在の耐震安全性に関する安全審査の手引きには、マスコミのいう「重要施設を活断層の上に建ててはいけない」という規定はない。そこにはこう書かれている。
建物・構築物の地盤の支持性能の評価においては、次に示す各事項の内容を満足していなければならない。ただし、耐震設計上考慮する活断層の露頭が確認された場合、その直上に耐震設計上の重要度分類Sクラスの建物・構築物を設置することは想定していないことから、本章に規定する事項については適用しない。
活断層の上に建てることは「想定していない」と書いてあるだけで、それを禁止してはいないのだ。このもとになる耐震設計審査指針には
敷地周辺の活断層の性質、過去及び現在の地震発生状況等を考慮し、さらに地震発生様式等による地震の分類を行ったうえで、敷地に大きな影響を与えると予想される地震(以下、「検討用地震」という。)を、複数選定すること
と書かれているだけで、「活断層の上に建ててはいけない」という規定はどこにもない。かりにそう書いてあったとしても、これは電力会社が発電所を建てるときの「手引き」にすぎないので法的拘束力はない。既存設備を改善するバックフィットは、できるならやったほうがいいが義務ではない。
この曖昧な規定を見直すのはいいが、その結果がどうなろうと既存の原発には適用できない。これは法の不遡及という法治国家の根本原則である。したがって今、土を掘り返して活断層をさがすことには何の意味もないのだ。また日本エネルギー会議のシンポジウムでも専門家が指摘したように、活断層は原発のリスク要因の一つにすぎず、それだけで原発を廃炉に追い込むような問題ではない。
反原発派に乗っ取られた原子力規制委は、民主党政権の残した負の遺産である。自民党は国会の同意を得ていない田中俊一委員長を初めとする委員の人事を見直し、まともな専門家に入れ替えるべきだ。