一票の格差で都市住民は大損している

藤沢 数希

昨年12月の衆議院選挙では、選挙区ごとの1票の価値に最大で2.43倍の格差があったとして、弁護士などのグループが、憲法違反により選挙は無効だとして、全国14の裁判所に訴えている。そして、6日に東京高裁で違憲判決が下された。今日は札幌高裁でも違憲判決が出た。まだ、選挙自体は有効ということだが、一向にこの問題を解決しない政治を、司法の側から正すため、このままでは選挙が無効になる判決が出てもおかしくない。さて、そこで1票の格差がどの程度日本の資源配分、再分配に影響を与えているのか、参議院選挙のデータを使って分析して見ることにする。

参議院は、都道府県ごとに議員数が割り当てられるため、1票の格差は衆議院よりも大きくなっており、また、都道府県別の統計の方が充実しているため分析しやすい。参議院では島根県民ひとりの票を1票とすると、神奈川県民は0.19票となり、約5倍もの格差が生じている。以下は、47都道府県を1票の価値が低いグループから高いグループに5つに分けて、1人当たりの公共事業費を計算したものである。
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出所:国土交通省建設工事受注動態統計調査報告(2012年)、総務省の資料から筆者作成


最も一票の価値が低いグループは神奈川(0.19)、大阪(0.2)、兵庫(0.21)、北海道(0.21)、東京(0.22)、福岡(0.23)、愛知(0.24)、埼玉(0.24)、千葉(0.28)となっている。最も一票の価値の高いグループは和歌山(0.59)、香川(0.59)、山梨(0.68)、佐賀(0.69)、福井(0.73)、徳島(0.75)、高知(0.77)、島根(0.82)、鳥取(1)である。グラフを見れば一目瞭然なのだが、一票の価値が高まれば高まるほど、県民1人当たりの公共事業費は増額される。また、北海道は厳しい自然などの特殊事情で、公共事業費が多いのだが、これを除いて平均すると、さらに格差は鮮明になる。神奈川県の1人当たりの公共事業費は3.8万円だが、島根県は18万円、鳥取県は11万円にもなる。これは一票の価値にほぼ比例している。

国会とは、限られた税収などを再分配するための仕組みだと考えれば、このような結果になるのは明らかだろう。実力のある政治家も、ない政治家もいるだろうが、基本的には政治家一人ひとりに利権が分配され、その利権が地元の選挙区の支持者に分配されるのである。だから、こうした再分配は、国民に等分されるのではなく、国会議員に等分されるのである。

こうした資源配分の歪みは、日本全体の経済にとってマイナスの影響があるだろう。そして何よりも、そもそも同じ日本国国民がこのように不平等に扱われるべきではないのだ。こうした一票の格差の問題は可及的速やかに解決しなければいけないだろう。