あとから振り返ったら、歴史が作られていく瞬間に立ち合っていたのかもしれない。大げさだが、そういう感覚を覚える。楽天・三木谷氏率いる新経済連盟が少しずつ、存在感を増しつつある。わずか1年前に本格的に立ち上がった団体だ。
時の総理が国内外の起業家と交流することはこれまでほとんどなかったのではないか。そして民間人である我々が同じ日に二回も、総理とゆっくり話す時間をもらえることもそうそうないだろう。本日開催される「新経済サミット2013」の前日、我々はSkype や Pinterest、Airbnb やUber の創業者らを連れて、首相官邸で30分ほど歓談。夜のパーティにも総理が出席し、各々の参加者と意見交換をした。
安倍総理も話していたように、「自民党はどちらかというとオールド・エコノミーのイメージがあるので、それを払しょくしていきたい」という思いもあるのだろう。「新経済連盟? 名前がダサい……」とも言われたが、ベタな名前の方がズドンと響くのだ。
新経済連盟の代表理事である三木谷氏が産業競争力会議に、同じく理事である金丸氏が規制改革会議に入っていることは、今後の経済再生にとって大きな意味を持つ。竹中平蔵氏が「ある人の言葉」として紹介していたように、「政府がイノベーションを起こす可能性は、男性が子どもを産む可能性がくらい低い」。経済成長のために特定産業に資金を割り振るという従来型の政策は時代遅れなのではないか。
そして、今回の会議、新経済サミット2013。1500名近くが参加する大型イベントとなった。前述したメンバーに加えて、Twitter 創業者やGoogle Android 生みの親も一同に会する。真の意味で世界を変えた彼らのような起業家から刺激的な話を聞かせてもらうことで、いわば参加者には「疑似留学」のような体験をしてもらうことが狙いだ。たかが会議、されど会議。人間の行動は脳みそからしか変えることができないとしたら、こうやって刺激的な話を聞いて発想や価値観を変えてもらうことが、変革にもっとも有効な手立てなのではないか。
このような取り組みに対して、総理以下が応援する姿勢を示していることは画期的だ。これまで日本は成功した起業家を称賛するのではなく、むしろ叩くことを常としてきたから。起業家やイノベーションを増やすというのは一夜にしてならずだが、「新しい製品やサービスを生み出すことはクールな生き方だ」と考えるビジネスパーソンが増え、かつ「そういった起業家を応援することがクールな政策だ」ということを政治家や官僚の皆さんにも肌感覚で理解してもらえるよう、これから努力していきたい。
今日一日が、日本の経済再生のささやかな一助となりますよう。最終セッション「日本への提言」はニコニコ動画とUSTREAMで配信されるようなので、よかったらご覧下さい。
編集部より:このブログは岩瀬大輔氏の「生命保険 立ち上げ日誌」2013年4月16日の記事を転載させていただきました。
オリジナル原稿を読みたい方は岩瀬氏の公式ブログをご覧ください。