維新の会が「農協解体」を参院選の公約に掲げるそうだ。
多分言ってるのは、農協の「共同購入、共同販売」行為についてで現状では皆さんご存知の通りで農産物の流通は農協の独占状態だけれど、独占禁止法の除外の扱いがされている。きっと維新の会はここに独禁法を適用させれば、株式会社の参入が促進して農業の活性化、みたいなことを思っているんだろう。
一応自分は実際に役人として経産省の立場から農業の産業化を検討したのですが、この「農協解体」なる公約は個人的にはかなり疑問を感じている。農協が農村の流通を牛耳ってるのは、別に独禁法で守られてるからじゃなくて、単に農産品の流通が儲からないことに問題があるっていうのが当時経産省が総力を挙げて検討した結果だった。むしろ問題視されたのは、農協が農産品の流通ではなくて金融で儲ける構造が確立しているっていうこと。農産品の流通・加工事業は赤字は当たり前で、農協にとって顧客である農業者をロックインして金融商品を売るためのツールとして機能している。地方の農村へ行くと昼は農協職員は誰も来ないけど、夜の飲み会に保険や金融商品を売りにくるというのは良くある話。
結果として金融に優秀な職員が回されて、本業は亜流のポストになって硬直化している現状。そんなわけで当時(2007年~2008年)経産省と農水省の職員同士の夜を徹した議論の結論は、農産品の流通だけで儲けるという発想に無茶がある、そこを攻めても農協の構造は変わらないというものだった。むしろ曲がりなりにも機能している重要な流通インフラを壊して破滅的な結果を招きかねない。なので政策としては経済的になりたちうる「農産物生産ー食品加工」もしくは「農産物生産ー流通」が一体化した取り組みを支援して、農協の独占構造を自然に崩していこうというものだった。ちなみによく勘違いされるのだけれど農水省の職員の方は改革マインドが強い人が結構多い。むしろ保守的なのは政治家のほうだったりする。
そんなわけで2007年~2009年にかけて、経産省側が中心で農商工連携、農水省側が中心で六次産業、っていう政策が進められた。どちらの政策ともそれなりに成果は出ていて、結果として農業は現場レベルでは変化の芽が色々出つつある。ただやっぱりそれじゃまだ動きは小さくて、農業が本当に変わるには農協に本気になってもらう必要があるのは間違いない。他方で金融で儲けているうちは農協は変わるインセンティブが無いので、本当に農協を変えたいなら独禁法の見直しじゃなくて、農協の業務規程を見直して段階的に金融事業を分離していくことが本命なんじゃないかと思う次第。それはかなりの劇薬になるだろうけど。
そして最後に一言、維新の会はこれ以上人気取りで付け焼き刃のお得意の「改革政策」なるものを掲げないほうがいいんじゃないでしょうか。一応支持者としての苦言です。
ではでは今日はこんなところで。
編集部より:このブログは「うさみのりやのブログ」2013年6月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はうさみのりやのブログをご覧ください。