泉田新潟県知事に再稼働申請の拒否権はない

池田 信夫

朝日新聞の原発再稼働反対キャンペーンが始まった。きょうの朝刊の1面トップは「再稼働申請「信頼壊す」 東電表明、新潟知事が批判」だ。東電の社長が、きのう柏崎刈羽原発の再稼働を原子力規制委員会に申請する方針を明らかにしたことについて、知事は「地元と信頼関係を築く意思がない」などとご立腹のようだ。


東電が柏崎について申請することは以前からわかっており、きのうの会見はそれを確認しただけだ。新潟県知事が申請を認可する権限はなく、まして記者発表に知事の許可はいらない。柏崎は規制委の新基準を前倒しでクリアしており、申請するのは当たり前だ。

泉田氏は、地元の市町村から「県の所管ではない問題にまで介入する独裁者」と恐れられているようだ。震災の瓦礫を柏崎市と三条市が埋却することについて「亡くなる方が出れば傷害致死と言いたいが(放射能の危険性を)分かっていて(埋却を)やったら殺人に近いと発言した。

このとき「セシウムに関して言うと、心臓や血管にたまるわけです。日本の平均寿命は今縮んだようです。心疾患や脳血管障害等も含め、ガンでなくても健康被害を及ぼす可能性が晩発性であってもあるということです」という医学的根拠のない発言で地元を脅したが、知事に許認可権はない。予定どおり処分は行なわれた。私はこういうツイッターをもらったことがある。


「200万人が健康被害」というのはどういう意味かわからないが、放射線被曝の健康被害は癌しかないので、これは「200万人が癌で死亡する」としか理解できない。これは「放射線を直接あびた作業員など60名以外にチェルノブイリの放射能による死者はいない」という国連科学委員会の見解と大きく異なる。

どちらが正しいのだろうか。彼の引用する産経新聞の原文を調べたブログ記事によれば、大統領の演説の原文はこうである。

Providing social security, healthcare, and improved living conditions for more than two million citizens-victims of Chornobyl, especially children and persons with disabilities, is our daily concern.

「200万人」とは書いてあるが、これはチェルノブイリによる汚染地域の人口の総数である。したがってvictimは「被災者」という意味で、「健康被害」なんてどこにも書いてない。泉田氏の訳によれば、福島県の人口も200万人だから、福島第一原発事故で200万人の「健康被害」が出たことになる。

泉田氏は、私が経産省の研究所にいたころの同僚だが、率直にいって評判はよくなかった。彼はまだ「福島の事故の検証・総括がなければ再稼働の議論はしない」と主張しているらしいが、政府と国会の事故調の結論が出た今、これ以上どういう「検証・総括」が必要なのか、具体的に指摘しなければ、ただ知事の権限を振り回していると思われてもしかたがない。