他方、ナショナル・ジオグラフィックは中国の大規模な「人体実験」の結果を紹介している。1950から80年まで、中国政府は華北の住民に暖房用石炭を無償で提供していた。MITのグリーンストーン教授などがこの暖房利用者の健康調査を行なったところ、浮遊粒子状物質の大気中濃度は他の地域より55%高く、住民の平均寿命は5.52歳短かったという。 この暖房が行なわれた地域の総人口は約5億人なので、25億年以上の寿命が石炭によって失われたわけだ。
北京や上海でも上の写真のように街はいつも曇っており、私は3日もいると頭痛がする。炭鉱事故も含めて、おそらく年間数万人が石炭で死んでいると推定される。中国政府もこの問題を深刻に受け止め、今後200基以上の原発を導入して古い石炭火力発電所を閉鎖する方針だ。
地球温暖化にとっても石炭は最大の脅威であり、オバマ政権は石炭に課税する政策を世界に提案する方針だという。これは「シェール革命」でエネルギーを自給できるようになったためだろうが、中国政府はこうした規制に反対している。日本にとっても、総合的な健康リスクを考えると、脱原発ではなく「脱石炭」を目標にしたほうがいいのではないか。