2020年東京五輪が決定づけた、東京の再成長と地方の没落

伊東 良平

2020年の東京オリンピックの話題はニュースに事欠かないので、こまかい前提は省略する。2020年の東京でのオリンピック開催による、日本の不動産価格への影響について考えてみる。

オリンピックと関係のない話から始めるが、下図は、2010年の国勢調査で把握された、2005年から2010年までの5年間の市区町村別の人口増減率を色分けしたものである。情報元はPDFで公開しているので、詳細は図をクリックしていただきたい。

【市区町村別人口増減率 2005~2010】

これを見ると、3大都市圏+5圏域で人口が増加しているが、山間部は大きく人口が減少している。次の国勢調査は2015年だが、2015年では主要都市圏以外の県庁所在地でも軒並み人口が減少すると予測されている。東北では、仙台への一極集中がより進む結果が予測される。

人口が減れば当然、国土当りの人間の数が減るのだから、その地域の土地の単価が全体として上がる見込みはない。同じ市町村の中で、利便性や環境のよい立地は地価が上がるかもしれないが、それは周辺の人口を吸収するだけで、市町村全体の地価(単価)を上げる要因にはならないだろう(※注1)。

一方2010年のデータでも、都市部でないが人口が増加している町村もある。軽井沢やニセコ、石垣島などの外国人にも人気の土地の人口は増えていたようだ。外国人の居住が大きく増えたとは考えにくいが、外国人が訪れることによって(日本人も訪れているからだが)、そこで働く日本人の数が増えたことが理由であることは容易に想像がつく。

オリンピック開催の時期やその前に、多くの外国人が日本を訪れることになる。日本各地の良いところと悪いところが外国人の目に触れ、日本人がそれまで良いと思っていたものが否定されたり、悪いと思っていたものが見直されたりするだろう。外国人に好まれる町は発展し、外国人の関心を呼ばない町は衰退する。外国人と一言に行っても、欧米、中韓、東南アジア、インド、イスラム圏、南米、アフリカなど、様々な地域から来るから、どのような町が好まれるかはわからない。煌びやかな国際都市かもしれないし、純日本的な小さな町かもしれない。ただ一つ言えることは、日本人にしか関心を持たれない町は必ず没落する。

オリンピックの開催により、国が首都である東京にカネと労力を振り向ける言い訳が与えられる。地方を無視して、ひたすら首都への投資に集中することに反対する者が減るであろう。人口が減少している地図の緑から青の地域は、住む人が減っているのだから、本来であれば公共施設やインフラの規模を小さくして、国民の税負担を軽減しなければならないはずだ。しかしそれは「公共施設やインフラを廃止する」というこれまでしたことのない選択を自治体に迫ることになる。インフラの廃止は地域の地価下落を加速し、不動産を担保とした地域金融はますます機能しなくなる(※注1)。日本の地方都市はこのように”縮小”してゆく。

2020年のオリンピックは、「東京オリンピック」であって、「日本オリンピック」ではない。オリンピックの開催により、東京(※注2)や外国人に注目される町は再発展し、外国人に注目されない地方都市は切捨てられ都市間格差がさらに拡大するであろう。それは”オリンピックを成功させるため”であろうから。

【関東地方の人口増減】

※注1:人口減少により土地の単価が下がるということは、その地域に住む住民1人当りの利用可能な空間が増えるのだから、地域全体で土地利用を上手に行えば、悪いことばかりではない。

※注2:「東京」は「東京都」を意味しない。「東京」圏であれば神奈川県でも千葉県でも埼玉県でも発展し、東京都内であっても、「東京」とイメージされない都下の西部や輪郭部は、衰退するだろう。参考までに、先ほどの地図の関東地方を拡大したものは上図の通り。

伊東 良平
不動産鑑定士/一級建築士