アップルの新型iPhone、CどころかFの評価? --- 安田 佐和子

アゴラ

アップルが満を辞して10日に発表した新型iPhoneの「5S」と「5C」、ガジェット好きが「Fワード」を浴びせるほど、惨憺たる評価が続いています。元iPhone利用者から現在の利用者まで建築家、広告クリエイター、ITエンジニア、デイ・トレーダーなどなどの友人から、それはもう聞くに堪えないな言葉が次々飛び出してましたよ。「5C」の「C」について、ある人など「Cheap〔安い〕かCrap(クズ)か」、なんて切り捨ててました。

ブルームバーグが「先駆者から模倣者への転換」と一刀両断にしたように最大のライバル、サムスンのお家芸であるプラスチック・ボディを採用したことで、ツチがつきました。サムスンがスマートウォッチを発表した一方で今回スマートウォッチはおろかマックプロ、iPodの新作をお披露目できなかったのも、打撃だったといえるでしょう。

アナリストの意見はといいますと。

【ネガティブ】

▽UBSは投資判断を「買い」から「中立」へ引き下げ。「5C」が依然として海外では高額であり、例えば中国ではアンドロイド版スマートフォンの価格を40~50%上回るという。

▽クレディ・スイスは「アウトパフォーム」から「中立」へ引き下げ。高価格帯のスマートフォン販売メーカーとしての有効市場の地位かつ競争性が低下したと指摘。高価格帯のスマートフォンはすでに頭打ちであり、中間層が無視されていると判断。

▽バンク・オブ・アメリカは「買い」から「中立」へ引き下げ。

▽パイパー・ジャフレイは、目標株価を従来の655ドルから640ドルへ引き下げ。「5C」の価格が依然として廉価版と言い難いほか、チャイナ・モバイル向けの販売価格を発表しなかった点に失望。投資評価は「オーバーウェイト」で維持。

【ポジティブ】

▽ウェルズ・ファーゴは新型iPhoneにつき営業利益率を押し上げると分析したほか、廉価版を理由にエマージング市場での顧客獲得に「ポジティブ」と分析。

▽オッペンハイマーは、目標株価を460ドルから540ドルへ引き上げ。チャイナ・モバイルおよびNTTドコモでの販売開始が追い風になると判断。

アナリストが気にしなかった一方で、ITオタクが嫌気した重要なポイントがもうひとつあります。

他でもない、ホームボタンの代わりに採用された指紋認証センサーです。アップルといえば、グーグルをはじめマイクロソフト、フェイスブック、ヤフーなどのように元CIAおよびNSA勤務のエドワード・スノーデン氏が暴露した監視プログラムに情報提供した企業でもあります。指紋認証の利用で、あなたの位置情報が判明するほか、指紋データそのものが盗難の対象となるリスクがくすぶりますよね。もちろん、アップルは「指紋は暗号化され、データとしてiクラウドなどに蓄積していかない」と説明して下さっていますよ。

とはいえ、こんなニュースが飛び出したことも非常に気になります。

NSAがiPhoneを始めとする位置情報を割り出す機能、アプリが格好の調査対象になるとプレゼン資料で指摘していたんです。しかも、スマートフォン利用者を「ゾンビ」と呼んでいました。

サムスンはアップル・ファンを盲目的に従う「羊」と揶揄してましたけどね……。

ちなみに、生みの親である故スティーブ・ジョブズ元CEOは「Big Brother」ですって。兄貴じゃないですよ、ジョージ・オーウェルのSF小説「1984」に由来しており、「監視の網の目を張る政府あるいは有力者」という趣旨で使われています。

生体認証は、iPhoneだけの専売特許ではありません。便利と思うかどうかは、使うあなた次第でございます。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2013年9月12日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。