土地規制作れば対馬が守れるとでも思ってるのかな??? --- うさみ のりや

アゴラ

最近長崎県の対馬の土地が外国資本に購入されそうになったことを受け、維新の国会議員団が視察に向かったり、国境周辺の森林の売買に関して規制をかけるべきとの提言が出たりと議論が盛り上がっているみたいです。対馬は韓国の目前にある国境の島で、韓国側も最近声高に領有権を主張しているので、気持ちは分からないでもないですし、そういった種の規制があっても良いとは思うんですが、だからといってそんな程度の対策で対馬の問題って解決できるとはとても思えないんですよね。

(維新の議員団視察)http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130826/stt13082621280009-n1.htm

(産經新聞の提言)http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130831/lcl13083103310000-n2.htm

去年少し仕事でいわゆる国境の島、と言われる対馬や五島列島の方々と色々とお話ししたんですが、国境の島々で外国資本が土地を買い始めた、というような事態の根本的原因は関西経済の地盤沈下なんですよね。今まで離島で捕れた魚を関西の料亭がぼちぼちの値段で買ってくれて、関西の企業や金持ちが社員旅行や観光でお金を落としてくれていた。それで島の経済は持っていて、土地も地元で管理されていた。それが最近関西の経済が地盤沈下してきて、仕方が無いから近くの韓国や中国と言った国に観光を中心に経済が依存する形に変わっていって、その延長で土地の売買まで行われるようになった、というような構図です。特に主力の漁業に関しては魚が高く売れなくなったから、無理矢理なんとかしようと乱獲したり、港を増築したりして、その結果海が汚れて海洋資源が枯渇して、魚が捕れなくなって、もっと強引な漁をして、海洋資源がますます痛んでいく、という負のスパイラルが止まらない。

島にいる人たちも問題あるのは分かっているけど止められない、そんな状況なわけです。一方でお隣の韓国はよくも悪くも国家ぐるみで竹島である「独島」をブランド化して、観光や購買や商標・意匠で経済的に強力に離島を支えている。対馬の目と鼻の先で取れる韓国産アナゴは日本でもブランド化しているくらいですからね。だから付け入る隙がない。結局日本の離島がつけ入れられているのは、経済的に困窮しているからなのですよ。

だから政府が本当に離島を守りたいなら、最低限の軍備は当たり前のこととして、中部や東京の都市部の人たちに離島の漁業資源をそれなりの値段で旨い旨いと味わってもらえるように離島のブランドイメージを作ることが必要なんですよ。実際、大間に負けないくらい対馬や五島の魚はおいしい。個人的には対馬のマハタ、アナゴ、ハガツオなんかは絶品だと思っています。これまでは関西にしか届いていなかったその味・ブランドを日本全国に展開するためにはどういうプロモーションが必要か、それを考えることが求められているんです。それには金なんて大していらなくて、安倍首相や石原さんや橋下さんが「うまい、うまい」といって離島の魚をカメラの前で食べることで十分なのかもしれませんし、庁舎と提携している食堂で離島の魚を調達するのを促すようなことも大きな効果を発揮するんじゃ無いかと思います。

そんなわけで、対馬を守れるのは規制ではなくて最低限の軍備とブランドだ、というのが個人的な意見です。根本的な原因を解決せずに変な規制なんか作ったって、どうせ穴をつかれるだけですからね。あんまり抽象的な話ばかりしても前に進まないので、少し具体的な話をしますと、対馬に細井尉佐義 (ほそいいさよし)さんというイカレタ親父さんがいます。生まれは佐世保で東京に上京してきたのですが、20代後半にいきなり対馬に引っ越して、「対馬を一本釣りで再生させる!」と10年間取り組んできたおっさんです。もしこの記事を読んでくださった政治家の方がいらっしゃいましたら、一度ご自分のパーティーで一本釣りで取れた対馬の魚を使ってみてください。本当に美味しいですから。(http://www.kaikomaru.com/about)そうやって地道に少しずつ東京や名古屋と言った非関西の都市部に対馬のおいしい味を楽しんでもらって、皆で共有するようにすることこそが「離島を守る」ということなんだと思うんですよ。

一時だけテレビの前でええかっこして「領土問題に立ち向かう議員」みたいな格好を取るのもいいんですけど、結局政治は市場に勝てません。だから政治家の方は、市場と向き合って、その市場の流れにそった、地に足の着いた離島政策やプロモーションのあり方を考えていただければと思います。

ではでは今回はこの辺で。


編集部より:このブログは「うさみのりやのブログ」2013年9月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はうさみのりやのブログをご覧ください。