いよいよ9月30日を迎え、政府機関の閉鎖まで12時間を切っております。オバマ米大統領はNY時間お昼過ぎ、ブリーフィングで「まだ合意を断念していない」と発言していますが、水面下で本当に交渉が進んでいるのか極めて微妙な情勢です。
ここで、アメリカの世論をチェック!CNN/ORCが9月27~29日に563人に対して実施した調査をみてみましょう。
1)政府機関の閉鎖は米国にとって良いか悪いか(※前回は3月15~17日実施時点の数字)
良い 27%(前回は34%)
悪い 68%(前回は64%)
中立 4%(前回は2%)
意見なし 1%(前回は1%)
2)政府機関の閉鎖で責任を負うべきは(※前回は9月6~8日実施時点の数字)
オバマ米大統領 36%(前回は33%)
共和党 46%(前回は51%)
両方 13%(前回は12%)
どちらでもない 2%(前回は3%)
意見なし 2%(前回は1%)
3)オバマ米大統領、共和党、民主党の対応への評価
▽オバマ米大統領
大人らしい対応 49%
駄々っ子のような対応 47%
意見なし 5%
▽共和党
大人らしい対応 25%
駄々っ子のような対応 69%
意見なし 6%
▽民主党
大人らしい対応 35%
駄々っ子のような対応 58%
意見なし 7%
4)医療保険改革法案について(※前回は5月17~18日実施時点の数字)
支持 38%(前回は43%)
不支持 57%(前回は54%)
回答なし 4%(前回は3%)
以上をみると、1)政府機関の閉鎖は悪い、2)責めるべきは共和党、3)共和党の対応は聞き分けのない子供のよう、4)それでも量保険改革法案を支持していない──というアメリカ人の意見が垣間見れます。
4)をみると、医療保険改革法案への支持率は決して高くないんですよね。2012年3月~2012年5月までは支持が40%を超えていた点を踏まえると、雇用情勢への不透明感と株安が影響している感はぬぐえず。2010年以降の医療保険改革法案に関する調査開始以来、2011年6月3~7日実施当時、つまり量的緩和第2弾(QE2)終了を控えダウ平均も5月高値から5%下落してました。期間中に発表された米5月雇用統計も東日本大震災の余波がくすぶり非農業部門就労者数(NFP)が速報値ベースで5.4万人増と、2010年10月にプラスに転じて以来の最小にとどまっていたんですよね。
2)の政府機関閉鎖での責任については、オバマ米大統領という回答が増え共和党が減っています。シリア問題しかり、米国家安全保障局(NSC)の監視プログラムしかり、失点が目立つ点も2期目のオバマ米大統領にとって逆風となりました。
とはいえ、共和党を責めるべきと回答するアメリカ国民が多いことは事実。3)の対応を評価する質問では、米上院で意味のないフィリバスターを行使した共和党のテッド・クルーズ議員(テキサス州)の存在も、少なからず影を落としたことでしょう。29日にNBC放送の「ミート・ザ・プレス」に出演したクルーズ議員を待ち構えていたのは、歴代4位のフィリバスターへの賛辞ではなくホワイトハウス担当記者デビッド・グレゴリーからの「誰も動かさなかったよね」という辛らつなコメントでした。
クルーズ議員のフィリバスター炎上作戦、失敗に終わった印象が強い。
政府機関の閉鎖へ突き進むと分が悪いのは共和党となり、1995~96年の焼き写しになりそうです。逆に言うと中間選挙を2014年に控えますし、ここからどのような手段を使って巻き返しを図るのかが注目されます。
【追記】
オバマ米大統領率いる民主党が多数派を占める米上院、大方の予想通り共和党が優勢な米下院による暫定予算案を否決しました。両者が真っ向からにらみ合いを続ける間にも、刻々と時が過ぎていきます。
米下院の選択肢はというと、
1)合意を断念し政府機関を閉鎖させる
2 )医療保険改革法案を盛り込んだ米上院予算案で妥協する
3)交渉の時間稼ぎをねらい、数日間のつなぎ予算を提出する
4)ヴィッター修正案(米上下院の議員、および連邦政府の職員向け医療保険の補助金カットなどを含む案)を盛り込んだ医療保険改革案を提出する
以上の4点が考えられます。ウルトラCを編み出してくるのか・・・ビザ申請中の社員を抱える弊社としても、早く譲歩していただきたいものです。
政府機関の閉鎖が開始した場合の経済の影響について、モルガン・スタンレーは「80万人の職員が一時帰休や無給休暇を余儀なくされ、1週間続くごとに米国内総生産(GDP)を0.15%ポイント押し下げる」と推計しています。米4~6月期GDPが2.5%ですから、0.15%ポイントは無視すべき数字とならないでしょう。
その他の影響はといいますと。
米9月雇用統計は延期される見通しですが、米新規失業保険申請件数は予定通り発表されるんですって。米国債は金利支払い、償還など通常運転いたします。米連邦準備制度理事会(FRB)は米連邦政府から独立した機関なので、国債取引が可能なんです。米国債については予算が成立して10月半ばをメドに債務上限引き上げてもらわないと、デフォルトが発生するわけですが……。
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2013年9月27日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。