テーパリング、今年は流行語大賞とれず? 来年へ持ち越しか --- 安田 佐和子

アゴラ

量的緩和(QE)の縮小をあらわす「Tapering」は、日本でもテーパリングでお馴染みですよね。金融市場関係者の間では「倍返し」、あるいは「じぇじぇ」並みの流行語となっていました。ところが、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)が見送った上、米議会が政府機関を16日にわたって閉鎖してくれたおかげで、「おもてなし」くらい遠い水平線の彼方へ消えた感があります。時のうつろいは、はかないものですねぇ。

ブルームバーグがエコノミスト35名に実施した調査をみると、テーパリング予想が年内からグッと2014年3月へシフトしたことが一目瞭然です。

▽FedのQE予想・中央値

10月29~30日 MBS 400億ドル 米国債 450億ドルで据え置き

12月17~18日 MBS400億ドル 米国債 450億ドルで据え置き

1月28~29日 MBS 400億ドル 米国債 450億ドルで据え置き

3月18~19日 MBS 350億ドル 米国債 350億ドルへ変更

4月29~30日 MBS 300億ドル 米国債 250億ドルへ変更

6月17~18日 MBS 210億ドル 米国債 150億ドルへ変更

7月29~30日 MBS 150億ドル 米国債 100億ドルへ変更

9月16~17日 MBS 70億ドル 米国債 0億ドルへ変更

10月28~29日 MBS 0億ドル 米国債 0億ドルへ変更

12月16~17日 なし

政府機関の閉鎖で連邦職員から民間企業まで一時帰休を余儀なくされたため10~12月期の成長が鈍化するとの見方から、予想QE縮小見通しが後退するのは致し方ありません。2011年8月に米国格下げに踏み切ったS&Pは16日、政府機関の閉鎖が10~12月期期国内総生産(GDP)を240億ドル押し下げ、少なくとも0.6%ポイントの下方修正につながると指摘。その上で、10~12月期GDP見通しを従来の3%から2%へ引き下げましたよね。JPモルガン・チェースも、10~12月期GDP予想を2.5%から2.0%へ下方修正しました。

1月15日に暫定予算が終了し2月7日に債務上限に到達を迎え、再び政治こう着の悪夢に襲われるリスクもあります。債券投資で知られるヘッジファンド、ダブルライン・キャピタルのジェフ・ガンドラック最高経営責任者(CEO)は、CNBCに出演し「議会の闘争が繰り広げられる限り、QEが終了することはない」と明言。また「はっきりしているのは、低金利がひたすら続くということ」とも予想し、信用市場の回復を見込んでいます。

TCWグループ解雇を経て、自身のファンドを設立し1年4ヵ月で100億ドルの運用資産を集めた辣腕。

2014年2月に米連邦準備制度理事会(FRB)議長に就任するイエレン氏が労働市場を重視するためハト派とみなされるのも、ウォールストリートの見通しが後ろ倒ししている所以でしょう。少なくとも、米9月雇用統計、米10月雇用統計をはじめ米議会動向が読めないなかでは、雇用が急ピッチで回復するのは望み薄。年内のQE縮小への壁は、相当高いといえます。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2013年10月19日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。