衰退するビジネスと隆盛するビジネス ~ 年末に近未来を考える --- 岡本 裕明

アゴラ

12月8日の日経新聞一面トップのタイトルは「ネット販売 店舗を侵食、本・家電 1割を越す」とあります。その中のブックオフの店舗閉店ラッシュの引用はまさに時代にマッチしなくなったビジネスの代表例でしょう。しかし私は2010年11月30日付のブログで同社の名前を上げてこのままでは立ち行かなくなると指摘しています。3年前から予想できたことなのに今更「事業モデルを見直す時期にきている」(松下展千社長)という悠長なコメントを見て、果たして大丈夫なのだろうか、と心配になってしまいます。


ネットが世の中を変えるのが今の大きな流れですが、歴史を見ればそうとは限りません。大規模店舗の進出で商店街がなくなり、証券会社はネット証券と手数料の自由化でいわゆる外交員が大幅に減りました。証券取引所からは場立がいなくなりました。これらはほんの一例でありますが、新しいものが出来れば必ず廃れる世界があることを前提に先読みをしないとビジネスそのものがなくなってしまうのが今の世の中といえましょう。

では私が今後放置すれば衰退しそうなビジネスとして思うものをあげてみましょう。

街中の薬屋と薬剤師、街中の飲食店、書店、ファッション関係の店舗、家電量販店、古書販売店舗……。

なぜでしょうか? 例えば街中の薬屋がなぜ厳しいかといえば街中の診療所があっての商売であり、処方箋の薬の売り上げが全売り上げのほとんどであるため、調剤の利益率がいくら高くとも経営基盤が極めて脆弱なのです。いわゆる資本力がある雑貨も販売するドラッグストアで調剤薬局を抱き合わせすれば顧客にとってはそれの方がはるかに便利なのです。

街中の飲食店。大胆な予想をさせていただくと日本人の口は肥えてきていますから旨くなければ行く価値がないと考える人が増えてくるのだろうとみています。若い人は酒も飲まなくなってきています。80年代頃まで良く聞いた言い伝えは「なぜ町のすし屋や潰れないのか」でしたが、オーナーの高齢化も含め、今後、維持できなくなる店が続出するでしょう。

では案外生き延びるビジネスは何か、と考えた時、私はデパートを挙げたいと思います。北米でいわゆるモールに行き慣れた生活をしている中で日本においてデパートに行くと必要なもの、見たいものがひとつの建物ですべて収まるという便利さを兼ね備えていることを改めて実感したのです。

なぜ日本においてデパートの売り上げが長期にわたり三分の二まで凋落したのかといえば二つの「付きまとうイメージ」だったのではないでしょうか? ひとつは定価販売で高いというイメージ、もうひとつは店員がしつこいという点でしょうか? ところが店員も最近では一定の距離を置いてくれますし、価格はセールが頻繁に行われている点を挙げておきましょう。また、東京のあるデパートで通常商品に若干傷があり在庫もなかったこともあり、値引き交渉したら5%→10%→11%と交渉すればどんどん下がるという経験もさせていただきました。むしろ家電量販店より交渉はスムーズだったことは私にとって特質すべき点であります。

先を読むというのは就職する若者も十分に考える必要があるでしょう。例えばネット時代を迎えて倉庫、配送センターなどロジスティックス(物流)関係、高齢化社会を迎えて介護関係、高齢者向けビジネス、TPPをにらみ、農業の第六次産業といった業種でこれらは今後、ますます伸びが期待できるそうです。ただ、若者が魅力を感じる世界かどうか、といえば疑問符がつくかもしれません。これが結局就職のミスマッチを生み、失業率や離職率の高さに繋がっていきます。

近いうちにこのブログで改めて書かせてもらいますが、日本は近い将来、非正規雇用が主流になると見ています。それは結果として日本の労働市場のルールも大きく変化させることに繋がるはずです。ゲアハルト シュレーダー元ドイツ首相が進めた「アジェンダ2010」は同国に柔軟な労働市場を作り上げたことで失業率は欧州の病人からベストパフォーマーへと変わっていったことは確かな事実なのです。

私には時代の変革と共にビジネスの根幹を揺るがす事態が頻繁に生じる今、日本の労働市場も柔軟性をもたせないと大変なことになるとみています。日経ビジネスの特集では会社の寿命が30年から18年と変わったとありますが、その変化に振り回されているのは結局は労働者自身であることは肝に銘じなくてはいけないと思います。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年12月12日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。