“悪しきインフレ傾向”は続く ~ 消費者物価指数と雇用情勢 --- 石川 和男

アゴラ

今日の総務省の発表によると、本年11月の全国消費者物価指数(CPI)は資料1〔=平成22年基準 消費者物価指数 全国 平成25年(2013年)11月分〕の通りだ。相変わらず、エネルギー価格の上昇が全体を押し上げている主因となっている。更に詳しい総務省資料によると、生鮮野菜や電気代、ガソリンなどの上昇による影響が大きいことがわかる。

 
主要マスコミ各社は毎月これを報じているが、このエネルギー価格上昇を原子力発電所の停止による電気代値上げを理由として報じているのは、今回の分についても現時点では1社もない。先のブログ記事など本件に関しては毎度書いているように、こうした報道機関の姿勢も、その発信元である政府の態度も全く解せない。エネルギー価格上昇は輸入エネルギーの増加に因るものであり、『望ましい物価上昇』ではないのだ。

政府はCPI(消費者物価指数)を政策目標の指標にいつまで掲げ続けるのだろうか。もう取り下げるべきだ。必要なのはインフレではなく、実質GDPの拡大であろう。インフレ傾向が国民生活に豊かさを体感させてくれるとは限らない。

労働者への賃金へ顕著に跳ね返るようにならなければ、国民生活の豊かさが向上したとは言えない。資料2〔=月間現金給与額(平成25年11月速報分)〕を見るとわかるが、今一つ力強さに欠けたままだ。CPIだけ注視していても、経済社会を見渡すことにはなっていない。


こうした“悪しきインフレ傾向”を止めるのに必要な手段のうち政府がすぐにできることは、原発再稼働によるエネルギーコストの低減とそれに伴う電気料金の引下げだ。今は、さながら“原発停止インフレ”だ。そんな愚かな状態から早期に抜けないといけない。脱却すべきはデフレではなく、“悪しきインフレ傾向”である。

<資料1:平成22年基準 消費者物価指数 全国 平成25年(2013年)11月分>

(出所:総務省資料) 

<資料2:月間現金給与額(平成25年11月速報分)>

(出所:厚生労働省資料


編集部より:この記事は石川和男氏のブログ「霞が関政策総研ブログ by 石川和男」2013年12月27日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった石川氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は霞が関政策総研ブログ by 石川和男をご覧ください。