「人類の良識と国際社会の常識」 --- 長谷川 良

アゴラ

中国の王毅外相は1月9日、アルジャジーラのインタビューで日本の安倍晋三首相の靖国神社参拝に言及し、「日本は人類の良識と国際社会の常識を尊重すべきだ」と述べ、安倍首相を批判したという。日本メディアのこの記事を読んだ時、冷戦時代の旧ソ連・東欧諸国共産政権のプロパガンダを想起した。

それにしてもよく言えたものだ。その腰の据わったプロパガンダ戦略には驚きを禁じ得ない。

中国共産党政権の実態はどうだろうか。


まず「人類の良識」というが、法輪功信者の臓器を生きたまま取り出して必要とする党幹部に移植してきたのはどの国だったか。不法な臓器移植問題を法輪功の信者から聞いた時、当方は信じられなかった。なぜならば、旧ソ連・東欧共産政権下でも聞いたことがない内容だったからだ。

欧州議会は昨年12月12日、中国の人体臓器の奪取(臓器狩り問題)について、即刻止めるよう中国政府に求める決議を可決している。

大紀元によると、決議案には「宗教・信条を理由に投獄された多数の法輪功学習者や少数民族を含む収監者から、中国政府の指示で組織的な人体の臓器奪取が行われていることについて、信頼できる報告書が継続的に出されていることに強い懸念を示す」と記されている。

「中国政府は死刑囚の臓器を移植用に摘出することについて、2015年までに段階的に廃止すると2013年8月発表しているが、欧州議会はこれを受け入れられないとし、即刻停止を要求している」(大紀元昨年12月15日付)というのだ。

不法な臓器売買、移植は明らかに「人類の良識」とは一致しないばかりか、残虐な犯罪行為だ。

次に、「国際社会の常識」はどうだろうか。チベット自治州への弾圧と同化政策は、国際社会の常識である「人権」と「少数民族の権利」とは一致しない。「信教の自由」はどうか。官製の聖職者組織「愛国協会」は存在するが、ローマ法王に信仰の中心を置くカトリック教徒は弾圧され、地下教会の聖職者は拘束されたり、刑務所に送られている。

中国共産党政権は市場経済を導入して国民経済を発展させてきたが、「国際社会の常識」の「人権」の現状は依然後進国と言わざるを得ない。ちなみに、欧州連合(EU)は中国の国民経済を「市場経済国」とは認知していない。

その中国が安倍首相の靖国神社参拝を「人類の良識と国際社会の常識」に反しているとして批判したのだ。このような批判は共産党政権しかできない政治文化だ。実際は、中国ほど「人類の良識と国際社会の常識」からほど遠い国はないのだ。


編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2014年1月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。