平成25年の実質賃金は上がらず ~ アベノミクスは『賃金』に未だ効果なし --- 石川 和男

アゴラ

2月5日に厚生労働省が発表した「毎月勤労統計調査 平成25年分結果速報」によると、平成25年の実質賃金は対前年比0.5%減とのこと。昨年に続き、2年連続の対前年比マイナスとなった。


広く一般的に国民が生活の豊かさを表す有力な指標が賃金水準に関するものだとすれば、この資料にある「平均月間現金給与総額」、「現金給与総額」、「きまって支給する給与」、「所定内給与」、「所定外給与」、「特別に支払われた給与」、「実質賃金」といった様々な指標のうち、どれを主に見ていくべきなのか。雇用形態も「一般労働者」や「パートタイム労働者」と異なり、業種も様々だ。
  

全体を表すのは、やはり「調査産業計」の「実質賃金」となるだろうから、その推移を見るのが一番手っ取り早い評価をする素となる。それは、下の資料〔=時系列表第6表 実質賃金指数〕の通りである。
 
これを、旧自民党政権(平成21年9月交代)→前民主党政権(平成24年12月交代)→現自民党政権という政治動向と絡めて見てみると、旧自民党政権から前民主党政権への交代時期前後の指標推移と、前民主党政権から現自民党政権への交代時期前後の指標推移は、結果として政権交代圧力を発しているように見える。
 
そういった観察眼からすると、アベノミクスは未だ効果を発揮しているとはとても言い難い。先のブログ記事などでも書いてきたように、デフレ脱却を物価上昇に求める強い拘りが現政権運営に感じられる。国民が肌で感じる景気好転とは、賃金水準の上昇であることは間違いない。悪しきインフレ傾向が創出されかけている現状は看過し得ず、そこから先ずは脱却する必要がある。

そのためには、先ず、溜まりに溜まっている成長戦略ダマ、即ち数多の規制改革項目の思い切った実施が必須となるだろう。原子力発電所の再稼働によるエネルギー安全保障や電力コスト低減に係る意思表明も、景気好転のための大きな側面支援になるだろう。国政選挙で3連勝した自民党ができなければ、一体誰ができるというのだろうか。

<資料> 

(出所:厚生労働省資料


編集部より:この記事は石川和男氏のブログ「霞が関政策総研ブログ by 石川和男」2014年2月13日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった石川氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は霞が関政策総研ブログ by 石川和男をご覧ください。