多くの報道がなされているように米国のIRSは、ビットコインを通貨としてみなさず、資産としてみなすと声明した[1]。日本の声明にちかい。
あわせて課税の取り扱いについて、かなり踏み込んで明確にしたのが特徴だ。IRSの取扱い方針についてざっと見解を調べてみたのて、解説する[2]。
ビットコインは、株式などと同様の無形の資産としてキャピタルゲイン税の対象になる。
1)ビットコインを保有し、価値が上がったところで売却した場合
→キャピタルゲイン税がかかる。「株が上がった」「土地が上がった」ので売ったら税金がかかるのと一緒だ。
2)ビットコインのトレードで、益が出た場合
→キャピタルゲイン税がかかる。同様。
3)ビットコインで給与をもらった場合
所得税がかかる。「米ドルで給与をもらった場合」と一緒である。受け取った時点のレートで米ドルを得たと推定される、。
4)ビットコインで物やサービスを販売した場合
所得とみなされる。受け取った時点のレートで米ドルを得たと推定される
5)ビットコインで買い物をした場合
ビットコインを時価で売って交換したとみなし、キャピタルゲインがあれば課税される
6)マイニングで得た場合
マイニングでビットコインを得た場合、そのビットコインは受け取った時点で米ドルを得たと推定され、総合課税の対象になる。マイニングにかかる費用は控除できる。
さて、1,2,3,4は、そんなに違和感がないだろう。ビットコインであろうとも、それを受け取ったり投資収益がでれば課税される。
問題は、4の一部と5と6だ。
ビットコイン建てで物を販売するたびに、その時点でのレートを把握し、幾らで売ったかを記録しておく必要がでてくる。事業者にとっては冷水である。詳細な記録システムが必要で、小規模な業者にとっては、負担が大きいだろう。そして、あとで税金が支払えなくならないよう、受け取ると同時に、米ドルに変換する必要があるだろう。
さらなる問題は5だ。ビットコインで支払った場合のキャピタルゲインだ。
たとえば、1BTC=100ドルでビットコインを買ったとする。これを、1BTC=500ドルの現在に買い物に使用するとする。
たとえば、500ドル分の品物を1BTC支払って手に入れた。このとき、元々手に入れた1BTCには100ドルしか払っていなかったのに、ビットコインが5倍になったおかげで、同じ1BTCでも500ドル分の物がかえた。
このとき、差額の400ドルはキャピタルゲインであるとみなされ、それに対して税金を別途払う必要がある。
理屈はわかるが、現時的にそんな計算は不可能だ。いつどのビットコインをいくらで仕入れたかというのを個人が詳細に記録しているわけではないし、それを買い物にあてたとき、いくらの差益がでたかなど、考えも及ばない。
コーヒー1杯を買うのにキャピタルゲインを計算するのか?といったジョークも出ている。
なお、世の中には、キャピタルゲイン税がない国も存在する。香港やシンガポールだ。これらの国では、一連の問題は、クリアできる。キャピタルゲイン課税そのものが、ゼロなのだから。トレードでいくら差益がでようが、税金はゼロである。
6のマイニングも驚きだ。マイニングで得たビットコインを換金した時点で課税されるならともかく、ビットコインを得た時点で課税されるというのには驚きである。マイナーは税金で破産しないように、ビットコインを採掘した瞬間に市場で売りに出さないといけなくなるだろう。
IRSの方針は、ビットコインに対する課税方針の中でも、最悪の方針だろう。これがビットコインの利用や普及に冷水を浴びせることになるのは間違いない。
米国の立法には詳しくないので、連邦のひとつの省庁が見解をしめしただけでこれが決まりなのか、それともその後裁判などで争われるのか、または、州の法律とどう兼ね合いになるのか、ちょっとよくわからないのだが、これがそのまま厳格に適用されると、ビットコインは死んでしまうだろう。
すくなくともマイクロペイメントはあり得なくなるし、小売や個人が使うものではなく、特定の投資と、多額の貿易決済や国際送金のための特殊な決済手段になるだろう。
なお、消費税はかかるのか?であるが、米国では消費税は州税であり、連邦政府(IRS)は、消費税は管轄外だ。消費税についての話はまだ聞いていない。
なお、この件含め、ビットコインについて再度セミナーを行う。当日は財布を作成いただき、ビットコインも配布する。今回は、大阪、京都で行うので、興味がある方は、ぜひ参加して欲しい。
大阪会場 4/5 13時30分 http://peatix.com/event/32696
京都会場 4/5 17時30分 http://peatix.com/event/32709
[2]The IRS Just Made A Crucial Ruling About Bitcoin