モメンタム株主導の下落局面、米市場の見通しを占う注目銘柄 --- 安田 佐和子

アゴラ

3月18~19日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録がハト派寄りとなり、株価をサポートした翌日。マーケットに熊ちゃんが戻って来ました。中国3月貿易収支で輸出・輸入が予想外に減少し世界景気の減速懸念が立ち込めたほか、JPモルガン・チェースとウェルズ・ファーゴの決算を翌11日控えポジション手仕舞いの動きが加速したようです。

米3月雇用統計後の流れと同じく、下落のけん引役はモメンタム銘柄。ギリアド・サイエンシズやアレクション・ファーマなどのバイオ医薬品関連の落ち込みが目立っています。ギリアドについては、3月後半にヘンリー・ワックスマン米下院議員(民主党、カリフォルニア州)をはじめ米議員がC型肝炎治療薬の法外な価格設定に疑問符を打つ書簡を送付した悪影響も引きずり、売りを促しました。

ソーシャルネットワーク・セクターにも下落が波及しフェイスブック、ツィッター、ネットフリックスが弱い。グーグル、テスラ、ヤフーなど、こぞって売りを浴びています。

モメンタム銘柄は、調整の域を超えた下落へ向かって足を引っ張っていくのでしょうか。CNBCによると、マーケット動向をうらなう上で、以下の銘柄がヒントを与えてくれそうです。

まず、バイオ医薬品銘柄の上場投資信託(ETF)である「ナスダック・iシェアーズ・バイオテクノロジーETF(iShares Nasdaq Biotechnology ETF)」。ティッカーIBBのこちら、2月25日の高値から約20%下落した弱気相場入りに直面しています。一時は200日移動平均線がある220ドルを抜け、2013年12月20日以来の安値を示現。ただ何とか同水準を上抜けて引けました

IBBの1年間・日足チャートは、こちら。

もうひとつは、ソーシャルネットワーク銘柄のETFである「グローバルX・ソーシャル・メディア・インデックスETF(Global X Social Media Index ETF)」。ティッカーSOCLのこちらも3月6日の高値から約20%下落したほか200日移動平均線を割り込んでおり、足元はサポート18ドル割れの攻防を迎えています。本日は18.34ドルで引けましたが、ここを明確に抜けてしまえば次のテクニカル・サポート14ドルまで下値余地が広がるので、18ドルは死守したい水準といえるでしょう。

こんな相場を迎えると、俄然元気になるのが「破滅博士(Dr. Doom)」の異名をもつマーク・ファーバー氏。割高にも関わらず売上が伴わないモメンタム銘柄を引き金に、「向こう12ヵ月間で1987年当時のような相場急落を迎える」と予想し、1987年当時より落ち込みが激しくなるリスクにも警鐘を鳴らしました。また「投資家は、ようやくFRBが無知な集団と認識するに至った」とまで言い放ち、「20%あるいは30%の下落もありうる」と不吉な見通しを示しています。

本日の相場を振り返ると、確かに悲観に傾きたくなります。ダウ平均は大幅に3日ぶり反落。取引終了の1時間前には75日、50日移動平均線も下抜け、一時283.84ドル安の16153.34ドルと米連邦公開市場委員会(FOMC)声明文が公表された3月19日以来の安値へ沈みました。終値ベースでは、3月14日以来の安値を迎えています。S&P500とナスダックも3日続落。S&P500は2月半ば以降サポートとなっていた50日、 75日移動平均線を割り込んで終了。2月24日以来の1840p割れとなりました。ナスダックは過去2日間の上昇を完全に打ち消す長い陰線を描き、下げ幅は2011年11月以来で最大。一時は4050pを割り込み、2月5日以来の安値で取引を終えました。

それでも、個人的には慎重な強気スタンスを維持しています。3月分の議事録にあったように、FOMCはまだまだ利上げに踏み切る気配が伺えないからです。Fedがタカ派に転じるか中国からよほどの悪材料が飛び出さない限り、正念場を乗り越えて再び仕切り直しに入るのではないでしょうか。恐怖指数で知られるVIX指数も本日は一時1.9%高の16.38まで上昇しつつ、3月14日につけた直近高値18.22に届いていません。金相場は確かに1.1%高だったとはいえ、原油相場は0.2%安にとどまり完全にリスク・オフとも言い切れず。タイミングを計りながら、落ちてくるナイフをつかむ勇気が試されつつあります。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2014年4月10日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。