世界に約12億人の信者を有する最大のキリスト教宗派、ローマ・カトリック教会最高指導者、ローマ法王フランシスコの聖地巡礼を控え、イスラエル国内で法王訪問反対デモやキリスト教関連施設への蛮行などヘイトクライム(憎悪犯罪)が増加し、治安状況が悪化してきた。
フランシスコ法王は5月24日、ヨルダンの首都アンマンを皮切りに、イスラエルのベツレヘムとエルサレムの3都市を訪問する。
アンマンでアブドラー国王と、ベツレヘムではパレスチナ自治政府のアッバス議長、そしてエルサレムではペレス大統領、ネタニヤフ首相と、それぞれ会談する予定だ。バチカンからの情報によると、フランシスコ法王はシリアのダマスカスの訪問を希望していたが、安全問題の理由から今回は実現されなかった
今回の法王の聖地訪問では、パウロ6世と正教会最高指導者、コンスタンディヌーポリ総主教アテナゴラスとの歴史的会談を記念するイベントがメインだ。パウロ6世とアテナゴラス総主教は1964年1月5日、会合し、1054年以来続いてきた東西教会の相互の破門(大シスマ)宣告を取り消した歴史的な和解を実現した。
50年前の歴史的会談を記念して、フランシスコ法王はエルサレムで東方正教会の精神的指導者(エキュメニカル総主教)バルトロメオス1世と50年前の歴史的和解を記念する行事を聖墳墓教会で行う予定だ。
ところで、ローマ法王の訪問を控え、イスラエルでローマ法王の訪問に反対するデモや教会関連施設への破壊行為が急増してきた。バチカン側はイスラエル政府にヘイトクライム対策を訴えている。
エルサレムのカトリック教会司教会議事務所の壁に、何者かが「アラブ人、キリスト者、そしてイスラエルを憎むすべての者に死を」と檄文を書いていた。12日には法王訪問反対のデモも行われたばかりだ。
ラテン典礼エルサレム教区のファアド・トワル総大司教は「ローマ法王訪問の歓迎ムードを破壊する蛮行だ」と批判し、イスラエル側の取り締まりの強化を要請している。カトリック教会関係者は「われわれは安全で、守られている、といった感じは全くない」と懸念を表明しているほどだ。
バチカン関係者によると、法王訪問に強く反対しているのは「過激な入植者たちとユダヤ教根本主義者たちだ」という。
編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2014年5月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。