米小売大手、中低所得者層向けほど弱含み --- 安田 佐和子

アゴラ

ウォルマートが5月15日に発表した決算から、米株は調整モードに入りましたね。米国の成長エンジン、国内総生産(GDP)の7割を占める消費が減速すると連想されたことが一因です。では、その他の小売り企業の決算はどうだったのでしょうか? 一連をまとめてみました。全体的に、大寒波のダメージや米4月小売売上高で予想されたように決算は弱含み。雇用統計では労働市場の改善に目がいきがちですが、こうしてみるとウォルマートの11~1月期の結果も含め賃金の伸び悩みか中低所得者層をターゲットとした小売大手を中心に苦戦を強いられている様子がうかがえます。

ウォルマート→減収・減益、決算は予想以下

寄り前に発表した2~4月(第1四半期)決算では、純利益が前年同期比5%減の35億9000万ドルだった。調整済み1株当たり1.10ドルとなり、市場予想の1.15ドル以下にとどまる。大寒波により、3セント押し下げた。会員制量販店サムズ・クラブの会員料金引き上げ、医療保険費用の負担が響いたという。売上高は0.8%減の1150億ドルとなり、市場予想の1163億ドルに届かず。ウォルマートの既存店売上高は0.2%減、市場予想の±0%より弱い結果となった。サムズ・クラブも0.5%減だった。

5~7月(第2四半期)は1株当たり利益につき1.15~1.25ドルと見込み、市場予想の1.28ドルを下回った。また設備投資を6億ドル投じ、「ネイバーフッドマーケット」と「ウォルマート・エクスプレス」など、小型店舗を増加させる計画だ。決算発表後の取引で株価は下落、2.4%安で引けた。

小型店舗で都市部に進出し、巻き返しを図ります。

(出所 : Plannersweb)

コールズ→減収・減益、決算は予想以下

2~4月(第1四半期)決算では、純利益が前年同期比15%減の1億4700万ドルだった。1株当たり利益は60セントと、市場予想の63セントに届かず。売上高は3.1%減の40億700万ドルとなり、市場予想の42億2000万ドル以下にとどまった。既存店売上高は3.4%減となり、市場予想の0.2%増から予想外に落ち込んでいる。ウォルマートと同じく大寒波が業績を押し下げたかたちだ。粗利益率は36.8%と、前年同期の36.4%から改善した。

2014年度通期の1株当たり利益予想は4.05~4.45ドルで維持したものの、中央値は市場予想の4.30ドルを下回った。売上高は2月時点の0.5~2.5%増から変更せず、市場予想は2%増。既存店売上高も0~2%増で据え置き、市場予想は1.3%増だった。取引終了後の株価は下落、3.4%安で引けた。

メーシーズ→増益・減収、利益は予想と一致も売上は予想以下

2~4月期(第1四半期)決算では、純利益が前年同期比3.2%増の2億2400万ドルだった。1株当たりは60セントと、市場予想と一致。売上高は1.7%減の62億8000万ドルと、市場予想の64億7000万ドルを下回った。同社は年内に1800人の人員を削減。年間1億ドルの節減を目指すなか、販売・一般諸経費は前年同期の20億4000万ドルから20億ドルへ縮小した。粗利益率は38.9%と前年同期の38.8%から上昇している。2014年度通期は、1株当たり利益につき4.40~4.50ドルで維持。市場予想は4.46ドルとなる。自社株買いは従来より15億ドル以上へ拡大すると発表。配当も従来の25セントから31.25セントへ引き上げた。決算発表後の株価は下落、0.02%安で引けた。

フォッシル→減益・増収、ただし前年の利益は一時的要因で大幅増加

2~4月(第1四半期)決算では、純利益が前年同期比8.2%減の6630万ドルだった。前年同期は買収に絡む一時的要因で押し上げられていた。また諸経費が14%増の7億7650万ドルとなったことも、利益を圧迫している。1株当たり利益は1.22ドルと、市場予想の1.18ドルを上回った。売上高は14%増の7億7700万ドルとなり、市場予想の7億7710万ドルに近い水準となる。

5—7月期は1株当たり利益に付き90~97セントを見込み、市場予想の1.18ドルを下回った。売上高は前年同期比8~9.5%増であり、7億6270万~7億7330万ドルに相当する。市場予想は7億7290万ドルだった。2014年度通期は、1株当たり利益につき6.90~7.30ドルで据え置いたが、中央値は市場予想の7.21ドル以下に。売上高も8~10%増で維持するなか売上高は35億2000万~35億6000万ドルと試算され、市場予想の35億8000万ドル以下となった。決算発表後の株価は下落、10.3%安で引けた。

ラルフ・ローレン→増益・増収も、見通しを嫌気

1~3月(第4四半期)決算で、純利益は前年同期比20%増の1億5300万ドルだった。1株当たり利益は1.68ドルと、市場予想の1.63ドルを上回っている。売上高は14%増の18億7000万ドルだった。しかし4~6月期は売上高が最大5%増の17億4000万ドルとの見通しを示し、市場予想の18億1000万負ドルを下回った。2015年通期(2015年3月末終了)は売上高が6~8%増と見込む。ただし粗利益率は低下を予想。年内に40~45店舗を新規開店するためと説明した。決算発表後の株価は下落、2.1%’安で引けた。

ノードストローム→減益・増収も予想上回る、見通しと設備投資を好感

2~4月(第1四半期)決算では、純利益が3.5%減の1億4000万ドルだった。1株当たり利益は72セントとなり、市場予想の68セントより拡大。売上高は6.5%増の29億3000万ドルで、市場予想の28億7000万ドルを超えた。既存店売上高は3.3%増となり、市場予想の1.1%増より強い。特にオンライン・カタログ部門の売上が33%増と前年同期の25%増から上げ幅を広げている。アウトレット部門ラックも、20%増と強い伸びを達成。百貨店の1.9%減を相殺した。売上が強含んだほか、販売・一般・事務費用も8億4400万ドルと売上の伸び以下の5.8%増にとどめている。2014年度通期は1株当たり利益につき3.75~3.90ドルで維持し、中央値は市場予想の3.86ドルを上回った。決算発表後の株価は上昇、14.7%高で引けた。

JCペニー→赤字縮小・増収、事業再編が奏功

2~4月期(第1四半期)決算は 純損益が前年同期比1.1%増の3億5200万ドルの赤字となった。1株当たり損益は発行済み株式数が39%増加したため、1.15ドルの赤字となり、前年同期の1.58ドルの赤字から縮小。市場予想の1株損益が1.25ドルの赤字も下回る。売上高は6.3%増の28億0100万ドルとなり、市場予想の27億1000万ドルを上回った。既存店売上高は6.2%増と同社の予想3~5%増を上回り、2期連続で増加。粗利益率は前年同期の30.8%から33.1%に改善した。2~3月の在庫一掃セールの規模拡大が利益率の拡大に歯止めを掛けた。

5~7月期(第2四半期)について、JCペニーは既存店売上高の増加率が1桁台半ば、粗利益率は前四半期比で改善する見通しとした。15年1月期通期の売り上げ見通しは据え置いた。決算発表後の株価は上昇、16.3%高で引けた。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2014年5月18日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。