「銭湯」の存在意義について考える --- おときた 駿

アゴラ

大きなお風呂は好きですか、皆さん?

私は大好きで、月に1回くらいは銭湯に足を運びます。

そんな銭湯ですが、主に消費税の増税などを背景に東京都ではおよそ6年ぶりに入浴料金が改定されることになりました。

都内銭湯の入浴料 7月から値上げへ


450円→460円への10円値上げとなるわけですが、そもそもこの値段が各自治体で統一されているのは戦後に制定された「物価統制令」によるものです。

闇市などで物品が不当に高騰することを防ぐために制定された物価統制令ですが、周りを見渡していただければわかる通り、もはや今の日本に残っているのはこの公衆浴場の入力料金ただ一つです。

日本の銭湯はもはやビジネスの範疇ではなく、

・(主にお風呂がない人たちへの)公衆衛生のため
・高齢者の外出を促し、地域コミュニティを活性化させるため

という福利厚生の一部となっているため、こんな時代錯誤な統制経済が唯一許されているわけですね。

当然そんな制度の中、現代の日本で銭湯が自活できるはずもなく、東京都や区市町村から多額の補助金が支出されることになります。

それでも都内の銭湯は減少の一途を辿り、現時点で696件、各銭湯の利用者は1日あたり100名強に留まります。

そんな都内の銭湯を維持するために使われている気になるお値段は…

平成26年度の東京都予算で約8億円です。これに加えて水道料金の減免措置や、各市区町村から支出される補助金もあります。

比較のために最近ブログで取り上げた政策の数値を並べますと、不妊治療のための支出が25億、市部の認証保育所への補助金が32億円です。

公衆浴場維持の主な目的と思われる「自宅に風呂がない生活保護者世帯」は都が把握している市部で1300世帯程度。区が管理している23区部を合計しても、おそらく都内で3000世帯程度でしょうから、ここに対して年間8億円が支出されているとも言えます。

それって、もう生活保護世帯に直接補助金を渡して、風呂あり物件に引っ越してもらった方が合理的なのでは…。

もちろん、実際にお風呂がなくて困っている人たちを助ける他にも、

・地域コミュニティとしての役割
・伝統文化としての継承

などがその予算担保の理由となっているわけですが、財政がひっ迫する現状において、大昔に制定された法案を根拠に毎年8億円もの予算を支出することが果たしてリーズナブルなのかどうか…。

つい最近、私の家の近所でよく利用していた銭湯が閉店しました。

今回の入浴料金の改定や消費税の増税との因果関係は不明ですが、もし公衆浴場に自由競争を強いれば、ほとんどの銭湯が淘汰されていくことになるでしょう。

公衆浴場の経営は決して楽なものとは思いませんが、所定の条件を満たしている限りは運営ができるようになっている補助金漬けのビジネスで、既得権益の温床になっているとの指摘も根強くあります。

私も個人的には銭湯が大好きで、なくなってしまうことはノスタルジックな感情からさみしいものではあります。それでもなお、合理的な決断をしなければいけない時期が来ている気がします。

※なお、この状態を抜本的に変革するためには、国の特別措置法の改正が必要になる国政マターです。

なかなか今の若い方は銭湯に足を運ぶ機会はないと思いますが、物価統制令による統一料金や補助金の支出について、皆さんはどう思われますか? 地元で銭湯ののれんを見かけたら、少し考えを巡らせてみてください。

それでは、また明日。


編集部より:この記事は都議会議員、おときた駿氏のブログ2014年5月28日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださったおときた氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はおときた駿ブログをご覧ください。