7月1日に国交省から発表になった路線価。予想通り、日本全体の不動産価格の回復ぶりが現れてきています。全国平均ではマイナス0.7%と前年から1.1%ポイントも改善し、1、2年のうちにプラスに転換する可能性が見て取れます。人口減が続く県ではまだまだ厳しい路線価で大都市の陰に隠れ話題にもなりませんが、高知県など大幅な改善を示している点は見逃せません。
その都市圏。例えば東京は6年ぶりにようやく1.8%プラスとなったわけですが、この上昇は初期の動きでこれから数年でエリアにより5~10%近い上昇は期待できるとみています。理由は流れ込む不動産関連の資金であります。REITが好調なうえに都内でも大型の不動産取引が動き始めていることから遅れまいとするほかのREITやファンドが先を争う形になるかと思います。
特に空室率が低く堅調な需要に支えられているオフィスや商業ビルの他、賃貸マンションも今後、ファンドが触手を動かすとみられテクニカルな理由で価格上昇がサポートされます。また、利回りの良いとされる地方都市の優良物件もファンドの組成形態から組み込まれやすくなり、結果として日本全体の不動産底上げが期待できるのです。
ところで人件費高騰で建設業界はアップアップの状態が続いてます。木造住宅はともかく、鉄筋コンクリート造となるとあきらめの境地という具合となってきました。日経電子版によると函館駅前の再開発にホテル建設は中止ないし再検討となり新幹線開業に間に合わない状態とあります。小田急の向ケ丘遊園の再開発も白紙撤回、木更津市や豊島区の事業も延期となっています。
それに対してある大手デベロッパーのコメントとして「事業者としては、労務費が高騰して建設コストが上がっても、利幅を少なくして何とか事業は継続する。事業ストップというのは、最終手段で異常事態。当社の事業で最近その判断を下した例は聞いたことがないが、いよいよ来たか、という印象だ」とありますが、私はこのコメントには違和感があります。それは大手デベは建設会社にとって最上級のお得意様ですから日本中から技術者と人手を集めて対応するのです。ところが一見さんとまではいかなくても顧客ランクBやC程度ならばそんな無理は聞いてもらえないというのが市場なのです。実際に大手スーパーなどかなりの優良顧客であっても建設中止を打ち出すところが続出しています。
日経ビジネスにも最近同様の特集が組まれていました。和歌山県のはまゆう病院建設は日本国土開発が工事していたものの単純な杭打ちミスが発覚。国土との契約を破棄し、基礎部分を解体し、戸田建設に再発注したとあります。もっともこれは2011年の話ですから今の人手不足とは直接的には関係なさそうですが。あの有名な鹿島施工の青山のマンションもほぼ完成していたのに壊して作り替えるとしています。もったいない話でありますが、施主も施工業者も超一流となればメンツの問題にもなりそうです。
いずれにせよ、今、技術者がいないというのは確かな話です。そしてバブルの頃のように所長が掛け持ち、下請け丸投げなどということも許されません。つまり、まともにやれば対応できないということなのです。
これが何を意味するか、おのずとお分かりになるかと思います。
新築住宅物件の供給が減り、且つ、新築不動産価格は建築コストの上昇を理由に高騰します。結果として住宅需要は新築から中古へとシフトし、中古住宅の価格も上昇するというサイクルに入ります。これは過去の歴史から見てもかなり確証が高いとみています。
不動産とは土地と建物の価格の合算です。その両方で上昇のベクトルがかかっており、デフレの面影は徐々に薄れてきています。一旦、箍が外れるとどんどん上がってしまう特性があることを考えればこれから5年の間に日本の不動産市場は大きく変貌を遂げるかもしれません。そして少なくともそれは日本に本当の好景気をもたらす絶好のチャンスであるともいえるのです。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年7月8日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。