米中古住宅物件、外国人の購入動向は本当のところどうなの? --- 安田 佐和子

アゴラ

アメリカの住宅市場は、高額物件を中心に外国人の躍進が目覚ましい。特にニューヨークでは、「現金購入する中国人」のニュースがセンセーショナルに伝えられていました。

では、実際のところどうなんでしょう?全米リアルター協会(NAR)が6月24日に発表した年次レポートが、教えてくれます。

外国人による米中古住宅購入額は、前年比を割り込んだ。2013年3月末までの12ヵ月間の米中古住宅購入額は682億ドルと、2012年3月末時点の825億ドルから17.4%減少。米国人を含めた全体の中古住宅販売額が1兆800億ドルのところ、6.3%を占める。ただ2011年3月末の664億ドルは上回った。

外国人による米中古住宅購入額が減少した一因は、世界景気の鈍化が一因として挙げられよう。

2012年にかけ、各国・地域でダウンサイドに振れていた。

国別の米中古住宅購入動向では、カナダが最も多く23%を占めた。次いで中国が12%、メキシコが8%、4位にインドと英国が同率で5%と並ぶ。ちなみに日本は、足元の流れを受け継ぎ1%だった。外国人中古住宅購入者のうち、42%が住居用に取得していた。別荘目的は20%、次いで賃貸向け投資目的は17%となる。

お隣のカナダとメキシコに挟まれ、中国が2位。

2013年3月末時点の国別動向は、以下の通り。年次はすべて同年3月末。

1位 カナダ 23%(2012年は24%と、過去6年で最高)

2位 中国 12%(2013年は2007年以降で最高、2012年は11%)

3位 メキシコ 8%(2012年と変わらず、2007年が最高で13%)

4位 インド 5%(2012年は6%、2009年が最高で9%)

4位 英国 5%(2012年は6%、2007‐08年が最高の12%)

6位 ドイツ 3%(2012年は3%、2009年が最高で5%)

6位 アルゼンチン 3%(2007年以降で最高、2012年は1%)

8位 イスラエル 2%(NARのデータなし)

8位 オーストラリア 2%(NARのデータなし)

8位 韓国 2%(2012年と変わらず、2010年が最高で3%)

8位 ブラジル 2%(2012年は3%、2007~12年と並び3%が最高)

8位 ベネズエラ 2%(2012年と11年、2007年は3%で最高)

8位 ロシア 2%(2012年と変わらず、2010年は3%で最高)

購入価格の中央値は27万5862ドル(2813万円)と、米国人の中央値17万9867ドル(1935万円)を大きく上回った。現金での購入割合も高く、外国人の場合は63%に及び2007年以降で最高に。米国人は30%に過ぎない。

国別トップ5、住宅購入価格・中央値トップは大きく水をあけて中国。

州別でみると、最も外国人の購入割合が高かったのはフロリダ州で23%だった。次いでカリフォルニア州が17%、アリゾナ州とテキサス州が9%で並ぶ。

気温が温暖で過ごしやすい地域に人気が集中。NYは2013年3月末で3%とレンジ内。

以下は、国別の購入者の傾向。

▽カナダ

観光・リゾート地を選好する傾向が高く、極端に都市部が少ない。購入額の中央値は18万3000ドル(1867万円)と、外国人全体の中央値を下回る。半面、現金での購入割合は86%と上位3ヵ国のなかで最も高い。

購入割合が高い州

1位 フロリダ州 39%

2位 アリゾナ州 24%

3位 カリフォルニア州 8%

4位 ハワイ州 6%

4位 テキサス州 6%

購入地域

1位 リゾート地・小都市 47%

2位 郊外 41%

3位 都市部 12%

購入方法

1位 現金 86%

2位 住宅ローン 14%

住宅タイプ別

1位 一戸建て 92%

2位 タウンハウス/コンド/アパート 5%

3位 その他 2%

▽中国

中国人購入者は居住目的が多数派なせいか、都市部を選好する傾向が高い。地理的な条件に恵まれ、かつシリコン・バレーを擁するカリフォルニア州が突出している点は大いに注目に値する。購入額の中央値は42万5000ドル(4335万円)と、外国人全体の住宅購入額では断トツ。

購入割合が高い州

1位 カリフォルニア州 53%

2位 イリノイ州 5%

3位 マサチューセッツ州 4%

4位 ノースカロライナ州 4%

5位 テキサス州 4%

購入地域

1位 郊外 52%

2位 都市部 40%

3位 リゾート/小都市 8%

購入方法

1位 現金 69%

2位 住宅ローン 31%

住宅タイプ別

1位 一戸建て 52%

2位 タウンハウス/コンド/アパート 48%

▽メキシコ

メキシコに近い西部、南部で比較的土地の価格が安い州を選好する傾向が高い。購入額の中央値は15万6250ドル(1594万円)で外国人全体の住宅購入額・中央値を下回る。現金での購入は上位3国のなかで最も低い。

購入割合が高い州

1位 カリフォルニア州 53%

2位 イリノイ州 5%

3位 マサチューセッツ州 4%

4位 ノースカロライナ州 4%

5位 テキサス州 4%

購入地域

1位 郊外 50%

2位 リゾート/小都市 30%

3位 都市部 20%

購入方法

1位 現金 48%

2位 住宅ローン 50%

住宅タイプ別

1位 一戸建て 89%

2位 タウンハウス/コンド/アパート 2%

3位 その他 9%

──以上、米国の中古住宅購入動向、外国人の実態に迫ってみました。こうしてみると、2010年の米国勢調査で分かったように、中国系の移民増加と米経済へ影響力が透けて見えます。2050年のアメリカ地図がこんな風に描かれるのも、致し方なしですね。

2050年は、西部を中心に中国系とメキシコ系が多数派になる?

(チャートの出所は全てNAR、2050年のアメリカ地図の出所はTruth in media、カバー写真の出所はBusiness Insider)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2014年7月8日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。