中国のスマートフォン市場で異変が起こりました。なんと2014年第2・四半期で話題の「小米(シャオミ)」がサムスンから1位の座を奪ったのです。小米(シャオミ)が誕生した2010年からわずか4年後の出来事です。小米(シャオミ)は世界第5位に浮上したことになります。そしてもっとも打撃を受けたのが、サムスンとLG電子で、サムスンは前年同期の32.6%から25.2%にシェアを落しました。このことは、今後の中国と韓国の関係を象徴する出来事だというように感じられます。
小米がサムスン抜きトップに、第2四半期の中国スマホ販売 | Reuters
2014年Q2の世界スマホ市場、中国Xiaomiが初めて5位に浮上:
韓国の経済を支え、成長エンジンとなってきたのは、造船、鉄鋼、自動車、そして現在、もっとも華々しい成果をあげてきている情報家電です。いずれもが、日本から援助を受けて育ち、やがて日本を標的にしたキャッチアップ戦略で伸びてきた産業です。
しかし韓国が日本を標的にしてきたのと同じ構図が韓国と中国の間で起こってきているのではないかと感じてならないのです。
韓国の台頭で日本が大きな打撃を受けた造船業は、今ではその韓国も中国に抜かれてしまっています。しかも今年にはいって、1~4月の中国が前年同期から10.8%と受注を伸ばしたのに対して、韓国は前年同期比17.0%減とふるわず、また4月単月では、日本にも抜かれて世界第三位となってしまったのです。
韓国船舶受注量が急減 世界3位に転落=日中を下回る
鉄鋼は、激しく日本の新日鉄住金と韓国のポスコが競り合っている分野ですが、国別に見れば、今や中国が生産量ではトップです。そして、世界経済の回復で輸出は伸ばしたものの、生産過剰に陥った中国の安い鉄鋼が韓国に流れ込む量が急増してきています。
勝敗はいかに?海を越えた日韓鉄鋼バトル 東洋経済オンライン
サーチナ|韓国鉄鋼業に「二重の危機」 中国製の大量流入と世界的な保護貿易=中国メディア
韓国は中国との貿易量が伸び、最大の輸出相手国となり、2012年には韓国の輸出総額の24.5%を占めるにいたっています。ただでさえ輸出依存度が高い韓国で、中国への依存度が高まり、さらに日本からの中国への投資が半減する中で、韓国は中国への投資を急増させました。
こういった経済関係の深化が、中国と韓国の蜜月時代の背景にありますが、甘い蜜には毒があるというのがこの世の習いです。今は、かつてのように国際分業の時代を終えようとしています。製造を委託する、あるいは投資して製造工場をつくっていたつもりが、いきなり設計も部品も製造もフルセットという企業があらわれ、競合相手となる時代です。
まさにスマートフォン市場で起こってきている小米(シャオミ)や華為、またレノボなどの中国企業がそうです。そしてサムスンのシェアを奪い始める現実がおこってきているのです。
まだ世界市場では、サムスンはトップの座を占めていますが、これまでのエレクトロニクス産業のシェアの推移を見れば、いくらトップであっても、あっというまに転落する歴史を私たちは体験してきました。韓国メディアでも、その危機感を募らせたコラムが登場しています。
【コラム】「韓国製造業の危機」…中国発の災難の前兆なのか | 中央日報
中国企業が台頭してくれば、韓国の輸出にも影響がでてきます。おそらく韓国と中国の蜜月が続けば続くほど、やがて韓国経済の成長ばかりか、韓国経済そのものが中国に飲み込まれる時代がやってくることもありえない話ではないでしょう。
経済の力関係は一国の命運をも握っています。経済のグローバル化が現実となった今、日本の安全保障を支えるのも経済成長力によるプレゼンスの高さであり、また多国間との経済関係を深化させていくことになってきます。TPPは目先の利益というよりは、今後日本が成長していく環境整備であり、交渉妥結を祈りたいところです。