アリババ、史上最大IPO大作戦の華麗なる1日 --- 安田 佐和子

アゴラ

00001

アリババ、IPO価格は68ドルとなり規模としては218億ドル。文句なしに米国史上で最大を記録しました。

全米が待望した巨大IPOだっただけに、上場初日前からウォールストリートには衝撃が走っていたのです。
CNBCによると、アロケーション段階で多くのヘッジファンドが希望を下回る水準だったと不満が漏れていました。
あるヘッジファンドは2億ドルを要請したものの、割り当ては金額ベースでわずか100万ドル、希望額の1%に満たなかったといいます。別のヘッジファンドなど数百万株を求めた一方、割り当て数はわずか1000株でした。

アリババと主幹事がフェイスブックの二の舞にならないよう、再三の注意を払ったためです。

アリババ側は、フェイスブック上場初日の技術的トラブル発生やその後の株価下落を何としても回避したかった。その結果、投信など長期投資家の優遇につながり、主幹事もアロケーションに9時間を割きアリババとの関係が深い投資家に配慮したとか。ヘッジファンドへのアロケーションが極端に少なかったのも、株価乱高下を意識した深謀遠慮からきたのでしょう。

マーケット寄り付きから約2時間半後の午前11時53分頃(NY現地時間)、アリババの取引は92.70ドルでようやく開始しました。ここに落ち着くまでに、80ドルから10回も仕切り直したといいます。

取引開始直後の、NYSEの風景。
alibaba-ipo2
(出所:My Big Apple NY)

取引開始後は目まぐるしく直後の取引は4809万株、10分間で1億株に到達するなど、ツイッターのIPOを超える勢いをみせました。

過熱した人気ぶりが株価にも反映され、取引開始からわずか10分でIPO価格から46.6%も高騰し99.70ドルを示現する狂騒を演じました。100ドル手前からは失速、90ドルを割り込んで一時は89.95ドルまで上げ幅を縮小。結局、終値はIPO価格から38.07%高の93.89ドル。終盤の盛り返しで、やっとこさ寄り付きの92.70ドルを上回ることができました。

IPO前のインタビューで、NYSEに立つジャック・マー会長は「映画『フォレスト・ガンプ』が僕のヒーローでね、今までに10回以上も観たんだ。自分らしく生きることを教えてくれるね。ストレスが溜まったらあの映画を観るんだけど、今日も来る前に観てきたよ」とお茶目な一面を覗かせました。アマゾンとの合弁会社設立については「中小企業を支援する協議なら、いつでも、誰とでも、どんなときでも歓迎だ」と発言。可能性を否定していません。

両社はオンライン小売大手とはいえ、アリババはアマゾンと異なり傘下に配送センターなど独自の販売プラットフォームを有していません。仮に合弁が成立するなら、アリババの商品流通にアマゾンが米国内を中心とする既存資源を提供する線となるのでしょうが、アマゾンに実入りがあるとはいえず。可能性は現状、極めて低いようにみえます。

時価総額をみると、アリババは初日で米国上場の優良企業をゆうに上回りました。

アリババ 2341億ドル

フェイスブック 2026億ドル

IBM 1932億ドル

アマゾン 1504億ドル

eベイ 648億ドル

中国企業であるアリババがアメリカン・ドリームを叶える上で開いたチョコレートの箱から、何が飛び出すのか。

さすが、アリババ上場初日にはNYSE前にこの人だかり!
ben eisen
(出所:Ben Eisen)

ベア派の市場関係者は 1)企業統治体制など中国ファクター、2)登記地がケイマン諸島、事業ベースが中国である事情からS&P500を始め大型インデックスの採用資格なし、3)IPO実施企業の約80%は1年目に株価がマイナス——という点に注目。特に今年、新規上場した企業のリターンは芳しくありません。ディーロジックによると、年内に上場した企業188社のうち約3分の1がすでにIPO価格を下回っているといいます。3ヵ月間の上昇率も19%と、2013年の36%、2012年の23%を下回っていました。

ちなみに本日、中国企業のIT関連株価はご覧の通り。

バイドゥ 1.5%安

58.com 9.0%安

微博 2.0%安

アリババは上場後、この方もおっしゃるようにババを引かないよう気をつけて頂きたいものです。

(カバー写真:NYSE)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2014年9月19日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。