rippple(リップル)の利点とリスク

大石 哲之

リップルについては、銀行ネットワークを置き換える反面、リスクも有る。

最大のリスクは、実際に換金してみるまで、お金が実際にあるかどうかわからない点だ。

リップルは現物のやりとりではなく、あくまで、借用書や預り証の付け替えシステムだといった。

この最たるものが銀行である。銀行は、あなたの預金をもとに、預り証を発行している。通帳は現金ではなく、あくまで銀行にたいしての請求権にすぎない。

もし、銀行に十分な現金がなかったらどうするのか。不良債権ばかりで、実際には現金がなく、全員が一斉に預金を引き出したら、現金がたりない。つまり、取り付け騒ぎである。

銀行は、規制をうけ、監督もうけているため、安全性を客観的に図ることができる。

一方、リップルの預託機関(ゲートウェイという)の場合、現在のところ、その信用を図る方法は限定的だ。実際に、精算してみるまで、そのゲートウェイが本当にお金を払い戻してくれるかわからない。

そもそもrippleの場合、最初に相手を信用する(トラストラインを張る)という行為が必要だ。トラストラインを貼ったゲートウェイからの預り証は、信用できるものとして受け入れる。受け入れるといったのだから、預り証を発行できるということだ。これは表裏一体だ。

あなたが銀行口座を開こうとした時、その銀行は信頼できるとおもってそこに口座を開く。どうような行為が、リップルではトラストラインを張るということに相当する。

しかし、リップルでは、銀行並みに信用できるようなゲートウェイがいまのところはない。もっともベンチャー的なしくみなので、望むほうがおかしいのだが、ただ、リップルの場合、それを信用しなくては取引がはじまらないので、とにかくどこかを信用するしかない。

まったくニワトリと卵の関係だ。

信頼できるところがないけど、どこかを信頼しないと利用できない。利用するひとが増えないと、信頼できるゲートウェイもできない。

思うに、リップルはこういうベンチャー向きな仕組みではなさそうだ。

ゲートウェイは、銀行の窓口業務そのものであり、高度な信頼が必要だ。

つまり、解は、すでにある銀行がリップルを採用して、ゲートウェイになるということだ。これができれば、信頼できる預託証書が出回ることができる。

リップルは銀行システムのコピーなのだから、リップルが有用に機能するには、銀行が必要なのだ。つまり、本物の銀行のようにセキュリティと信頼が高いもの、つまり本物の銀行そのものが必要だということになる。

これはrippleにおけるパラドックスだが、もし本当に銀行がrippleを採用しはじめたら事態は変わる。

現在の銀行システムと親和性が有り、自分の預金がripple上にのって、手数料がほぼ無料で、瞬時に24時間、送金(付け替え)できたりするようになる。既存の仕組みが格段に使いやすくなるので、現金やデビットカード、クレジットカードを完全に置き換えるだろう。

ただ、ビットコインのようにボトムアップの発展に期待するのは難しそうだ。ripple labなどが積極的な営業主体となって、銀行への導入を働きかけ、インテグレートする必要がある。

そのためにripple labは株式会社になっていて、権限が集中しているのかもしれないが。つまりrippleはオープンソース的なものではなく、銀行向けソリューションの提供会社とみたほうがしっくり来る。この点もビットコインとは異なる。

銀行自体ををリップルによってリプレイスするのではなく、銀行を顧客として、銀行のITをリプレイスする、とかんがえるのがいいと思う。

楽天銀行なり、ジャパンネットバンクがrippleを導入するようなら、ぜひ関わってみたい。独自アプリで、送金無料とするよりも、もっと面白いことができるはずと見ている。