若者のキャリア形成に大人は手を出して良いのか?

松本 孝行

キャリアというのは偶然の産物である、と言われる事があります。就職活動や若いころに「こういう仕事をしたい」とか「こうなっていたい」と思っていたこととは違う人生を歩むことは多々あります。希望していた部署に配属されなかったり、就職活動に失敗して第二・第三希望の企業に就職したり、希望しているキャリアを歩める人は少数派でしょう。

また周りの大人に影響されることもよくあります。しかしキャリア形成に置いて影響される側の若者の立場ではなく、影響を与える側の大人の立場になって考えると、どこまで若者のキャリア形成に口と手を出していいものか、悩ましいものがあります。


例えばの話ですがある若い20歳そこそこの子がいるとします。フリーランスでウェブデザイナーになると決めたけれどもスキルも経験もありません。そこで私としてはデザイン会社のインターンを紹介する事もできます。もちろんそこに行くかどうかは若者自身が決めることですが、乏しい社会人経験ながらいきなりフリーランスで働くよりも、企業で体系的に学び、仕事を経験するほうが後々フリーランスで働くとしても、プラスになるでしょう。

この時の私がとる選択肢は多様にあります。一つはデザイン企業で下働きさせてもらった方がいいと説得し、半ば無理やり企業のインターンに行かせる方法。もしくは企業を紹介して興味があれば面接を受けてもらう方法。そしてフリーランスでやっていくと決めたのだから何も口を出さず応援するという方法。主に3つほど考えられると思います。

上記の例は実話を単純化した話ではありますが、若者がキャリアを形成する上でこういった若者の決断に対し、どのように年上の人間は関わっていくべきなのでしょうか。無理やり「こっちの道でキャリア形成しろ」と言って、社会の先輩である大人が確実性の高いキャリアを歩ませることもできるでしょう。逆にすべて自分自身に任せてしまうという方法もあります。関わるなら、自分が知りうる限りの情報を与えて「じゃああとは自分で考えて、決断しなさい」ということも出来ます。

しかしすべてを若者の決断に任せてしまって、大人として、先輩としての責務を果たしているのかどうか非常に疑問です。若い人は経験値が低いですから、間違った道を選ぶこともあります。遠回りを選ぶこともあります。ある程度社会経験がある人の目から見て「それはおかしい、損をする」というキャリアを選択する場合もあるでしょう。大人の目から見てキャリア形成に良くない決断を無理矢理やめさせるのもまた、問題があるように思います。

私としてはできるだけ自主性を重んじたいと思っています。若者が自分で選んで決断することは尊重したいですが、それが遠回りであることやベストな選択肢ではないということもわかります。その時、大人・社会の先輩としての責任を考えると、どこまで突っ込んでキャリア形成に口と手を出していいのでしょうか。皆さんは若い人たちのキャリア形成にどのように関わっているのでしょうか。

100%の正解はないにせよ、大人としての責任を果たし、かつ若者に後悔のないキャリアを歩ませるためにはいったいどうしたらいいのでしょうか。