米9月雇用統計・NFPは20万台を回復、失業率は6年ぶり6%割れ --- 安田 佐和子

アゴラ

米9月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比24.8万人増と、市場予想の21.5万人増より強い結果となった。前月の18.0万人増(14.2万人増から上方修正)を上回り、あらためて20万台に乗せている。過去2ヵ月分は6.9万人分、上方修正された。なお3ヵ月平均は22.4万人増となる。

NFPの内訳をみると、民間就労者数が23.6万人増と市場予想の21.0万人増を上回った。6ヵ月ぶりに20万人を割り込んだ前月の17.5万人増(13.4万人増)を超えている。特にサービスが20.7万人増と、前月の16.1万人増より強く3ヵ月ぶりに20万件台を回復した。

(サービスの主な内訳)

・ビジネス・サービス 8.1万人増>前月は6.3万人増、増加トレンドを維持

そのうち派遣は2.0万人増>前月は1.0万人増、増加トレンドを維持

・貿易/輸送 3.7万人増>前月は0.9万人増、増加トレンドを維持

そのうち小売は3.5万人増>前月は0.5万人減と6ヵ月ぶりに減少

・娯楽/宿泊 3.3万人増>前月は2.0万人増、増加トレンドを維持

・教育/健康 3.2万人増<前月は4.2万人増、増加トレンドを維持

・政府 1.2万人増>前月は0.5万人増、増加トレンドを維持

・金融 1.2万人増=前月通り、6ヵ月連続で増加

・情報 1.2万人増>前月は0.5万人増、4ヵ月連続で増加

財政産業は2.9万人増となり、前月の1.4万人増を上回った。9ヵ月連続で増加している。

(財政産業の内訳)

・建築 1.6万人増=前月通り、8ヵ月連続で増加

・製造業 0.4万人増>前月は0.4万人減し増加トレンドに終止符

雇用の伸びは4-6月期の勢いには届かないものの、巡航速度を回復。


(出所:CNN Money)

時間当たり平均労働賃金は、前月比±0%の24.53ドル。市場予想の0.2%および前月の0.3%(0.2%から上方修正)を下回った。前年比も2.0%と、市場予想の2.2%および前月の2.1%に及ばず。週当たりの平均労働時間は前月まで6ヵ月連続で34.5時間だったが、今回は34.6時間へ延びた。製造業の平均労働時間は3ヵ月連続で40.9時間となり、2007年以来の高水準となる41.1時間以下を保つ。

失業率は市場予想および前月の6.1%を下回り、5.9%。2008年7月以来の6%割れを示現した。マーケットが注目する労働参加率が前月の62.8%を下回り62.7%と、1978年2月以来の低水準に並んだことが一因となる。

失業者数も、前月比32.9万人減と前月の8.0万人減を上回る下げ幅だった。雇用者数も23.2万人増と、5ヵ月連続で増加。ただ就業率は4ヵ月連続で59.0%と、2009年8月以来の59%乗せを保った。経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている不完全雇用率は11.8%と、前月の12.0%から低下。2008年10月以来初めて12%を割り込んだ。平均失業期間は前月の31.7週から31.5週へ短縮、少なくとも2010年3月以来でもっとも短い。失期期間の中央値は2009年4月以来の低水準となる前月の13.2週とほぼ変わらず、13.3週だった。

フルタイムとパートタイム動向をみると、フルタイムは前月比0.6%増の1億1929万人となり、3ヵ月連続で増加した。パートタイムは1.4%減の2736万人。1993年以来で最大の増加幅を記録した6月、7月に増加を経て2ヵ月連続で減少した。

イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長のダッシュボードに含まれ、かつ「労働市場のたるみ」として挙げた1)不完全失業率(フルタイム勤務を望むもののパートタイムを余儀なくされている人々)、2)賃金の伸び、3)失業者に占める高い長期失業者の割合、4)労働参加率──の項目別採点票は、以下の通り。

1)不完全失業率 採点─○

9月は11.8%、前月の12.0%から低下。2008年10月以来の12%割れを達成。不完全失業者数も前月比2.4%減の710.3万人だった。

2)長期失業者 採点─○

6ヵ月以上の失業者数は9月に295.4万人、前月の296.3万人から0.3%減少。平均失業期間は31.5週と、8月の31.7週から短縮した。ただし失業者に占める割合は31.9%と2009年6月以来の低水準だった前月の31.2%から上昇している。

3)賃金 採点─△

9月は前年同月比2.0%、足元2.0~2.1%のレンジを維持。生産労働・非管理職の時間当たり賃金は前月比横ばい、前年比ベースでは2.3%の上昇となり2.5%から鈍化した。

4)労働参加率 採点─×

9月は62.7%と、1978年2月以来の低水準に並ぶ。非労働人口は9260万人と、過去最悪を記録した。労働前月に下振れが目立った16-18歳は上昇しており、18歳以上が低下をけん引したとみられる。軍人を除く民間労働人口も1億5586万人と、前月比で微減した。

JPモルガンのマイケル・フェローリ米主席エコノミストは、結果を受け「これまで世界成長の鈍化、ドル高、低インフレを背景にFedは利上げに忍耐強くなれるとの認識が優勢だったものの、失業率の低下が示すように労働市場のたるみは予想以上に解消が進み世界のディスインフレ効果を吸収しつつある」と指摘。第1弾の利上げ時期は、米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーの間で「2015年半ばに集約されていくだろう」と予想した。次回10月28-29日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、フェローリ氏は「相当な期間(considerable time)」にわたる低金利や「大いなる労働資源の活用不足(significant underutilization)」に関する文言につき議論が白熱するとも予想しており、「『相当な期間』の扱いをめぐっては9月FOMC議事録が手掛かりとなりうる」との考えを示した。

バークレイズのマイケル・ギャピン米エコノミストは、結果を踏まえ「時間当たり賃金に労働時間を掛けた賃金動向をみると7-9月期は3ヵ月比年率で4.6%上昇しており、1-3月期の4.1%および4-6月期の4.5%から加速した」といい、所得環境の改善が進んだと指摘した。雇用の伸びも順調でFOMCの第1弾利上げ予想を2015年6月で維持しつつ、「労働市場の改善が足元のペースから加速すれば同年3月に前倒しとなるリスクもある」と結んでいる。

ヒルゼンラス記者は「20万人以上の力強い雇用の伸びが続けば、来年早々の利上げもありうる」との見方を配信。どちらかといえばハト派寄りだった同氏のスタンスに、変化の兆しが現れている。

以上、8月の雇用統計から一転し早期利上げを意識させるような内容との見方が浮上しています。10月FOMCで量的緩和(QE)の終了宣言だけでなく、「相当な期間」の文言まで削除されるのか。また9月失業率がFOMCメンバーの2014年末見通しレンジ下限にたどりつくなか、「大いなる労働資源の活用不足」の文言は緩慢な賃金の伸びに配慮して残るのか。ひとまず、来週8日に公表される9月FOMC議事録を見極める必要がありそうです。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2014年10月3日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。