真のおもてなしを求めて:到達すべき英語のレベルについて

松岡 祐紀

先日、メキシコ人に「もう何年も英語を勉強しているけど、全く英語が話せるようにはならない。でも、よく文法なんて勉強しなくても、英語を聞くだけで覚えることが出来るというけど、本当か?」と訊かれた。

そんなわけないだろう。

まずは文法をきちんと学び、そして今度は覚えた文法と語彙を駆使して、英作文を書いて先生にきちんと添削してもらうのが一番だと答えた。どこの国でも「英語は赤ん坊の頃のように聞くだけで覚えることが出来る」というマヌケな商法があるのだなと思った。


母語の習得方法と、第二言語の習得方法は当然異なる。だから、母語の習得方法と同じ方法で第二言語を習得しようとしてもうまくいくわけがない。(自分自身が子供の頃のことを思い出せば分かるはずだ。毎日新しい発見の連続で、スポンジのようにどんどん物事を吸収していける時期だ。経験を積んだ大人が同じような方法で、言語を習得しようとするのは無理がある)

臨界期仮説

また12歳以降に新しい言語を習得しようとしても不可能であるという誤った臨界期説を唱える人もいるが、当然それも間違っている。

留学経験なしで、なおかつ12歳以降に英語を習得した「英語の達人」を対象にし、彼らがどのように英語を習得したのかというのが上記の本の内容だ。これを読めば、実際に12歳以降でも英語をネイティブ並に話すことが出来るようになることが可能だと分かる。
(もちろん、並大抵の努力ではない。しかし、これだけのことを行えば、英語をネイティブ並に話すことが出来るようになるという指針にはなる)

(こちらから引用

NHKが英語講座にCEFR(セファール)という評価基準を導入した。これはヨーロッパで導入されている評価基準で、外国語で実際に何ができるかを中心に評価した指針だ。これを見れば、自分の英語の運用能力がどの程度かよく分かる。

日本人は本人たちが思っている以上に英語をよく勉強しているが、それでもやはり多くの人がCEFRでいうA1、A2レベルになると思う。英単語や文法などは知っていても、それを運用する能力が低い。その次のレベルのB1レベルは、「英語圏の日常生活に困らないレベル」というから、まずはこのレベルの英語習得を目指すのが現実的だ。

「英語をネイティブ並に話す」ということは、とても高いハードルだし、それと同時に万人が目指すべき目標ではない。所詮、英語なんて日本では必要ない言語だ。もっと気軽に構えていいのではと思う。まずはCEFRでいうところのB1レベルを目指せばいい。これは万人が到達できるレベルだし、それほど大それた目標でもない。

日本人はなぜか英語を勉強するときは、「ネイティブ並に話す」という壮大な目標を描いて、途中で結局挫折してしまう。だったら、最初から「到達可能な目標」を設定してから、一歩一歩確実に努力していけばいい。

一般的にB1レベルに到達するには350時間から400時間の学習時間を要すると言われている。毎日2時間、それを半年続けると到達できる学習時間だ。スキマ時間を合わせれば、忙しいビジネスマンでもこれだけの学習時間を確保することはけっして不可能ではない。

自分自身は19歳はイギリスに留学して、21歳のときにCEFRでいうところのC1レベル(TOEICで950点相当)のケンブリッジ試験に合格した。だからこそ言えるが、英語が出来て損したことなど一度もない。むしろ得した経験しかない。

まず日頃忙しい日本人の英語学習者が真っ先にすべきことは学習時間の確保ではないだろうか?半年か1年で400時間程度の学習時間が確保出来ないようであれば、日常会話に困らない程度の英語を習得するのは難しい。
(語学はある程度、継続して毎日勉強しないとけっして上達はしない)

日本人は英語が苦手と国際社会に認知されているが、そんなことはないと信じている。勤勉な国民性を活かして、これからそれを覆していくべきときだ。多くの外国人の友人が日本を旅行したが、彼らが日本の悪口を言うことを聞いたことがない。ただ、やはり唯一ネックになったのが、英語だ。(それでも、多くの友人が日本人のホスピタリティに感嘆し、言葉が通じなくても、とても親切にされたと口をそろえて言っている)

彼らの好意にいつまでも甘えることなく、多少の英語が使えるようになれば、それこそもっと素敵な「おもてなし」が出来るのではないだろうか。

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松岡 祐紀
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