ハケンを規制したら正社員になれるの?

池田 信夫

労働者派遣法の改正が国会の焦点になっています。これは3年以上の派遣労働をSE・翻訳・放送など26の専門職に制限していた規制を廃止する一方、すべての派遣労働者を3年でクビにさせる改正です。企業は、労働者を交代させれば、いつまでも派遣社員を雇うことができますが、今まで無期限に雇われていた専門職は3年でクビになります。


これに対して野党は、職種の拡大に反対していますが、3年でクビにすることには反対していません。彼らは「正社員だけが労働者でハケンは人間じゃない」と信じているようです。民主党政権は派遣労働の規制を強化し、2011年に日雇い派遣を禁止しましたが、その結果、正社員は増えたでしょうか?


正社員と非正社員の構成比(出所:労働力調査)

図のように、民主党政権の時代に派遣社員の比率は3%から2%に減りましたが、正社員も減りました。増えたのはパート・アルバイトです。派遣社員を3年でクビにすると、彼らはパートになるのです。派遣社員なら一定の専門性を身につけてキャリアアップできる可能性もありますが、アルバイトにはその可能性はありません。

派遣労働の職種を広げれば、今までパートでしか雇用されなかった労働者が専門職になれる可能性がありますが、問題は今まで長期雇用されていた専門職を3年でクビにするように規制することです。何のためにこういう奇妙な規制をするんでしょうか?

それはこの改正が、経営者と労働組合の妥協の産物だからです。経営者にとっては、いろいろな職種で派遣労働者を使えたほうが便利ですが、労働組合は自分たちの既得権が派遣におびやかされるのがいやなので反対します。そこで派遣社員は3年でクビにして別の派遣を雇い、正社員と競合しないようにするのです。当の派遣社員のことは何も考えていません。

このように雇用の規制を強めることが「労働者の保護」だというのは錯覚です。日本の労働人口は毎年1%近く減っており、建設現場や外食産業では人手不足が深刻化してきました。こういう労働人口のゆがみを正して、労働生産性を上げることが重要です。

これはよい子のみなさんにはむずかしいと思いますが、労働者ひとりあたりの付加価値額です。日本の労働生産性はアメリカの7割ぐらいで、特にサービス業が低い。この最大の原因は、仕事のなくなった中高年の正社員が高い給料をもらって遊んでいることです。

派遣社員や契約社員の規制は撤廃し、不正行為は労働基準監督署が事後的に摘発するしくみに改めるべきです。これが規制改革の基本的な考え方です。正社員だけが「正しい働き方」だという固定観念を改め、労働者が多様な働き方を選べる社会にしないと、労働生産性は下がり、成長率は低下します。その最大の被害者は、これから職につく若者と女性なのです。