マンガの未来を目指す学生の作品を募集、マンガ家やクリエイターが審査して、大手コミック雑誌の編集部が参加、才能を発掘してビジネスにつなげていく取組が始まりました。
デジタルマンガ部門、イラスト・キャラクター部門、未来のマンガ部門を設け、年内に作品を募集。里中満智子さん、山田ゴロさん、犬木加奈子さん、倉田よしみさん、つだゆみさんが特別審査をしてくださいます。大学、専門学校など40の学校が参加します。講談社、集英社、小学館、KADOKAWA、秋田書店などの30ものコミック編集部が出口を用意してくれます。
ぼくが実行委員長です。
キックオフの集まりで、あいさつ申し上げました。
小さいころ、マンガ家になりたかった。でもどうしたらいいかわからなかった。石森章太郎先生や赤塚不二夫先生のマンガ教本を読む程度でした。学校があると知っていたら、それを目指したかもしれません。でも仮に、学校に入ったとして、どうすればプロフェッショナルになれるのか、今もよくわかりません。
ぼくは30年前に就活に苦しんだクチです。そのころ既に、いろんな企業が就職説明会を開いていました。今、マンガ家になる説明会のようなものが整ってるんですかね。そういうきちんとしたパスが必要なんじゃないかと思います。
むかしマンガばかり読んでいると不良になると言われました。でも今やクールジャパンとかで、マンガやアニメは国の宝だそうです。そうしたコンテンツ。コンテンツという言葉は、20年前に生まれました。当時、政府の委員会では、コンテンツを生む人材をどう育てるのか、そのための学校が日本には乏しいではないか、というのが重要課題として挙げられていました。
20年経ちました。今日もたくさんのマンガ学校のかたがたがお越しです。ぼくも慶應義塾大学でメディアデザイン研究科というコンテンツ人材を育てる大学院づくりに参加しました。京都の精華大学のように、世界的なマンガ家が学長になるような例もあります。状況は変わった。ように見えます。でも、だからといってマンガ業界もコンテンツ産業も、活性化しているわけではありません。
ぼくは政府・知財本部のコンテンツ政策をとりまとめる仕事をしています。政府が発行する知財計画に、コンテンツ人材の育成は毎年、重要課題として掲載されます。でも、今の問題は、そうやって育った人によって、マンガ業界やコンテンツ産業やそこに携わる人たちが豊かになる、その実績を上げること。
このプロジェクトは、それを、デジタルに特化したかたちで、おカミに一切頼らずに民間の資金だけで実行するものです。そこに40の学校が集まり、30の編集部が賛同する。そうした場ができる、ということです。成果を上げましょう!
審査委員長の里中満智子先生が来場者に対しマイク越しに言いました。「人は育つ。育てる学校もある。だけど問題は、出口。夢と希望の持てる出口を用意できるかどうかです。デジタルで誰もがマンガを表現できるようになりました。その可能性を広げましょう。アンタ(ぼくのこと)も自分でやりなさい。」
うっ、でっかいブーメランが返ってきた。
はいはい。やりすごそうとしていたら、近づかれ、ヒソヒソ声で言われました。
「海外のマンガは、画家なの。日本のマンガは、脚本家なの。書きたい物語があれば、絵がヘタでも、その人でなければ描けない絵なら、胸を打つのよ。歳は、関係ありません。だからね、アンタも、作品を作りなさい。」
うっ、とてつもない説得力がある。
どうしようどうしよう。何か作らないと、まずいかなコレは。
編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2014年11月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。