彗星探査機「ロゼッタ」が解析する生命誕生の謎

アゴラ編集部

「生命」とは何か、と言えば、代謝をしつつ自己の生存を維持し、増殖し、自己と外界とを区別する存在、とされています。地球に生命が誕生したのは、地球ができた45億4000万年ほど前から5億年ほどたった40億年前(プラマイ2億年)とされているんだが、最初の生命がいったいどうやってできたのか、つまり無から有が生まれたのか、それとも他に原因があるのか、についてはこれまで多種多様な理論が発表され、いまだに議論が続いてきたテーマです。生命は、地球ができたときの「素材」が合わさり、自然にできたのか、それとも宇宙から「シーズ」がやってきてそれが地球の生命になったのか、というわけです。


その中で有力なのは「地球外起源説」いわゆる「パンスペルミア説」です。「パンスペルミア」という言葉は、汎用の意味の「パン」と種や種撒きという意味の「スペルミア」の合体語。スペルミアは、英語だとスパーム、精子になる。つまり、地球外から来た物質が太古の地球に何らかの作用をし、そこから生命が生まれたか、あるいは宇宙人のような地球外生命体が地球に生物を持ち込んだのか、というものです。

11月13日に、欧州宇宙機関(ESA)の探査機「ロゼッタ」から打ち出された小型着陸機「フィラエ」は、初めて彗星(チュリュモフ・ゲラシメンコ67P)に着陸したんだが、フィラエはロゼッタ経由で彗星の表面を解析したデータを送ってきました。その中には、彗星の表面に存在する気体から有機物の証拠が示唆される、というデータがあり、ESAが発表して話題になっています。

彗星は、宇宙のチリと氷からできています。このチリ、スターダストからはこれまでも有機物やアミノ酸が見つかっているんだが、今回、初めて彗星から有機物が発見されたかもしれない、というわけです。アミノ酸は宇宙ではありふれた物質、と言われています。宇宙から地球に落ちてきた隕石や彗星などからも発見されている。

ところで、宇宙の物質は鏡像関係の対になっているものが多く、アミノ酸も左手型のLアミノ酸と右手型のDアミノ酸があります。しかし、地球上の生物のタンパク質は、ほぼ左手型のLアミノ酸によって作られている。この理由が、宇宙に存在するアミノ酸の性質によるんじゃないかという説があり、宇宙からのアミノ酸がもとになって生命が誕生したという「パンスペルミア説」のバックボーンになっています。チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星から見つかった有機物をさらに分析すれば、生命誕生の謎が解けるかもしれません。


チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星:画像提供:ESA

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アゴラ編集部:石田 雅彦