ネットを見ていたら、日本人の観光客は3年連続で「世界最良の観光客」という調査結果に出っくわした。
ちょっと古いが、オンライン旅行会社エクスペディア ホールディングスが2009年に実施した調査で、2009年で3回目(つまり1回目も2回目も日本人が一番だった)。インターネット(メール)による調査で、アジアを含む世界4557軒のホテルのマネージャーが回答した。
それによると、1位は日本人(71ポイント)、2位は英国人(52ポイント)、3位はカナダ人(51ポイント)。一方、ワースト1位はフランス人、以下、スペイン人、ギリシア人と続いた。
調査は、全9項目の質問に関して「最良」「最低」をそれぞれあげてもらう質問形式で実施。最良に選ばれた国を10ポイント、最低に選ばれた国を0ポイントと換算する。
日本人は「行儀の良さ(その国のマナーや一般的なエチケットを守る)」「礼儀正しい」、「部屋をきれいに使う」、「騒がしくない」、「不平が少ない」の項目で1位。また「旅先での気前の良さ」(5位)、「チップの気前の良さ」(5位)、「ベストドレス(おしゃれ)」(4位)でも上位に並んだ。
一方「現地の言語を話す」においてワースト3位と、「日本人が旅先での言葉に苦労していることが浮き彫りになった」という。
日本人同様評判の良い英国人も「行儀のよさ」「礼儀正しさ」「気前の良さ」の項目で2位。だが「苦情が多い」という点ではワースト2位だった。「礼儀正しく気前もいいが、言うべきことはしっかりと言う、成熟した旅行者といえるかもしれない」というのがエクスペディアの分析。
一方。米国人は「行儀のよさ」「礼儀正しさ」「部屋をきれいに使う」「騒がしい」などの項目でワースト1位。一方「気前の良さ」「チップの気前の良さ」「現地の言葉を話す」で1位となった。
日本人は言葉が苦手なことも手伝って苦情を言わないことが、「マナーや行儀が良い」と判断されているのかも知れず、裏を返せば「扱いやすい」「カモにしやすい」ということかも知れない。「言挙げせよ日本」(松原久子氏)につながる話である。
だが、日本人には「こちらをバカにしたり、カモにするようなサービスの悪いホテルやレストランには苦情を言わない代わりに、黙って次からは行かない」という「沈黙の反撃方法」を持っている。それを知った外国のホテルやレストランはそういう不埒な態度をとらなくなる。
それはともかく、こうした日本人観光客への評判は、日本や日本の商品への信頼につながっていると思われる。「マナーが良く、礼儀正しい日本人とビジネスをすれば安心だ」という信頼感である。
以前、国別ブランド度調査で日本が1位になった、という調査を紹介したが、「日本の売り」は商品やサービス、さらに日本人の身のこなし、礼儀に表れた品質の良さだということなのだろう。
その信頼感が世界に広がっている。非難しているのは中国と韓国だけ。その評判をことさら大きく、歪んだ形で取り上げる新聞やテレビが多いものだから、もともと謙虚で自分を主張しない(言挙げしない)性格も加わって、自信喪失気味になってきたのではないか。
もっと自信をもって世界に商品やサービスを売り込み、かつ日本の良さを主張して行っていいのである。
それは、夜郎自大になったり、居丈高になることとはまったく違う。今までの態度のままでいながら、自信をもって、世界に出て行くことである。
一つアイデアを挙げれば、商品を販売するときに、日本の測定機関で厳密に検査したことをラベルに書き込む工夫があっていい。欧州はISO(国際標準化機構)など国際標準を決めるのが上手で、ISO規格がないと、安全性や品質が劣るような状況を作り出すのに成功している。
これと同様、日本も「ジャパン・クォリティ」(日本品質)のようなものを作ればいい。「日本品質」「日本規格」と日本を表に出すと反発を招くということなら、「おもてなし」規準などにする。無駄を省いた商品やサービスに「もったいない」規格を作ってもいい。各国のビジネスマンから注目されると思う。
自分が良いと思うものを前面に出して行けば、景気もおのずと良くなって行くのではないか。
編集部より:この記事は井本省吾氏のブログ「鎌倉橋残日録 ~ 井本省吾のOB記者日誌」2014年11月30日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった井本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は鎌倉橋残日録 ~ 井本省吾のOB記者日誌をご覧ください。