日本のニュース番組を見ていると実に面白いのはどんな事件が起きてもそれを解説できる専門家がさっとスタジオに呼ばれて番組に深みを出すという事でしょうか? 専門家が述べる解説は確かに説得力があり、知らない世界を語り、一般視聴者になるほど、と思わせます。
小説を読むといわゆるその世界に生きてきた人が描く小説はおっと思わせるものがあります。渡辺淳一氏の小説は氏が医者であり、北海道と京都に縁があったことで氏の小説では頻繁にそのテーマが描かれています。池井戸潤氏は銀行勤めだったし、濱嘉之氏は警察だったからいわゆる内側から見た目線で書き上げています。山崎豊子氏の「運命の人」だって彼女が毎日新聞記者だったことがその作品のバックボーンだと思っています。
専門をバックグラウンドに描く小説は自分の経験をもとにアウトプットをする点が圧倒的に優れています。例えば東野圭吾氏のように技巧的で最後のどんでん返しを含む読者の引き付け感に優れた作風に特徴を持たせる作家とは違います。バックグランドを持った作家は時として荒削りなぐらいの真に迫る迫力が大きな魅力だと私は感じています。
私はインプットとアウトプットのバランスをよく考えています。実を言うとこんなことを考え始めたのはこの10年ぐらいだと思います。それまではひたすらインプットばかりで見るもの、聞くもの、触るもの、経験全てが自分のエキスとなって取り込まれていたような気がします。ところが取り込んだ情報の整理整頓が悪いせいか、せっかくのインプットがうまく人に伝えられない、書けない、教えられない、実行できないといった問題に直面したのです。
昨日読んだ新聞、この前読んだ雑誌、あるいは小説がふと記憶から引っ張り出せない、一言でその内容を語ることができない、主人公の名前が思い出せないなど「読んだ気がする」でとどまってしまうことがしばしばなのであります。そこで私はインプット情報を様々な形で自分に紐つけるようにしています。
例えば読んだ本はグーグルドックのマイライブラリーで管理していますから何年に読んだ本でどんな内容かすぐに引き出せます。あのソフトが優れているのはISBNの番号で一発で出てくるという事でしょうか? その上、その基本データを自分なりに加工し、自分だけの一言コメントも添えてありますから「あぁ、そうそう」という記憶が辿れます。
雑誌と本はひたすら折り目か線をいれています。私は読んだ本をブックオフには売りません。数年たってもう一度読むこともしばしばだからです。例えばルースベネディクトの「菊と刀」は自分の書き込みも多く、まさに学校の教科書状態になっています。そこまで読み込み、考え、自分のものにして記憶の紐をしっかり作り上げていくのです。
ここまでは案外、誰でも出来ますが、一番大事なのはここからだと思います。
先ず、自分の仕事との関連付けができるものは派生的に考えて仕事に生かせるか、自分はどうなのか、考えています。本や雑誌、ネット記事を読むのはあくまでも自分の経験とは別次元でソファに寝転んでも得られるインプットです。ところが仕事となるとお客様との関係、経営者としての安定感や成長、次のステップなどあらゆる現実の世界との遭遇であります。
現実の世界とインプットした本等の情報を混ぜて最終的にアウトプットする、つまり、行動に移す流れになります。
簡単そうで実はこれはマインド的にかなり一生懸命やらないとできません。だから、歩いているときもトイレに入っている時も考え続けなくてはいけません。そして一瞬のひらめきをぱっとどこかに書き留める事でしょうか? だからペンと紙は絶対に持ち続けるのです。ひらめきとは一瞬の花火のようなものでもあり、夢のごとくでもあります。正に記憶の忘却となってしまうのでそれを繋ぎとめておく、そしてそのアイディアを具現化していくのであります。
アウトプットは正直、容易ではありません。また、本などで得た知識はそれはそれでとても有益なのですが、自分の生活と何らかの形で結びつけないと「関係のない世界」になってしまいます。だから私のインプットは実業とのコンビネーションであることが大事だと思っています。
ただ漠然とインプットするのか、意識をもってインプットするのか、そしてそれをどう加工し、アウトプットするのか、この一連の流れがとても重要ではないでしょうか? アウトプットの具現化は生活や仕事の改善であり、ブログであり、時として講演などを通じて行っています。また、様々な会合で色々な人と談笑する際のネタにも当然なりえます。せっかくインプットした情報をうまく引き出せないのは悔しいですよね。ちょっとした工夫でずいぶん変わるものです。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年12月7日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。