吉野家牛丼380円値上げの理由は「うまい→安い→早い」の優先順位 --- 内藤 忍

アゴラ

普通のコンビニとセブンイレブンが別物であるのと同じように、普通の牛丼店と吉野家も別物だと思っています。不思議なことに、海外から帰ってくると無性に食べたくなるのが吉野家の牛丼なのです。

現在一杯300円の吉野家の牛丼並盛が、12月17日午後3時から380円にいきなり27%も値上げされることになりました。大盛りは460円から550円に、特盛は560円から680円ですから、80円~120円の値上げになります。


吉野家の値上げで思いだすのが、以前並盛を300円から350円に値上げして、経営が悪化し、1980年に倒産したという黒歴史。しかし、当時の経営悪化の理由は価格ではありません。急成長の中で、品質が低下したことです。

コストダウンと大量生産のために、つゆを粉末に変更したり、輸入牛肉の供給不足を補うために、輸入制限が適用されないフリーズドライの乾燥牛肉の利用をしたことなどから、味の劣化で客離れが進んだことが原因とされています。

今回の値上げで吉野家の経営はどうなるのでしょうか。値上げにより客足は落ちるでしょう。しかし、値上げの原因は円安や、干ばつとアジアの需要拡大による米国産牛肉の価格急騰により原材料が値上がりし、300円では採算が取れなくなったことです。赤字の商品を主力にする歪んだビジネスから正常化する訳で、適正価格に戻っただけだと言えます。

以前、BSE問題が解決して米国産牛肉の輸入が再開されてからは、並盛380円で販売されていました。それが、2013年になって280円に値下げし、2014年4月に消費税の増税により300円に再び値上げされ、今回380円に戻った訳です。300円や280円といった価格が異常だったとも言えます。ラーメンやカレーといったファストフードの競合と比較すれば、380円でも決して高いとは言えず、価格よりも味を優先する今回の決断は、ファンとして納得しています。

吉野家の社長の記者会見では、吉野家の価値の提供順序は、「うまい→安い→早い」だそうです。安さのために値下げ競争に陥るのではなく、一定の味を維持した上で、価格とスピードで勝負する。正しい戦略だと思います。

値上げ発表の当日のランチタイムに久しぶりに行った吉野家は、いつにも増してお客様で大混雑でした。恐らく、17日の値上げまでは話題性もあってお店は大混雑が続くでしょう。

ご飯を軽めにしてもらい、半熟卵をかけて紅ショウガと七味を入れる、いつもの食べ方。これからも、価格は変わっても味だけは変えないで欲しいと思います。

編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2014年12月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。