原油安止まらずダウ315ドル安、楽観的なFOMCメンバーに喝? --- 安田 佐和子

アゴラ

米連邦公開市場委員会(FOMC)を16-17日に控え、原油主導で米株が崩れダウ平均は10月30日以来の安値で取引を終えました。 S&P500も終値ベースで10月30日以来の2000p割れが迫り、ナスダックは11月10日以来の安値をつけています。

本日の下落要因は、こちら。

1)米11月生産者物価指数
予想外に弱い数字となり、ディスインフレ懸念が再燃。

2)中国11月工業生産の鈍化
中国11月工業生産は前年同月比7.2%増となり、市場予想の7.5%増を下回った。前月の7.7%増からも鈍化している。1-11月固定資産投資も前年比15.8%増と予想と一致したとはいえ、増加率は1-10月の15.9%から鈍化、13年ぶり低水準近くとなる。

3)国際エネルギー機関(IEA)の月報
2015年の世界石油需要の増加幅を日量90万バレルとし、前回の予想から日量23万バレル引き下げた。石油需要は1日当たり9330万ドルを見込み、11月時点の9360万ドルから下方修正。2015年OPEC産原油の需要見通しも、日量30万バレル引き下げ2890万バレル。

ダウ平均(上)もS&P500(下)も、50日移動平均線まで売り叩かれて引け。



(出所:Stockcharts)

来週はFOMCに加えギリシャ大統領選を控え、ボラの高い不安定な相場が続くのでしょうか。

FOMC声明文では「相当な期間(considerable time)」を外し、グリーンスパン時代に沿って利上げに対し「忍耐強くなれる(patience)」との文言に差し替えられるとの公算。ここは規定路線として、マーケットが警戒しているのはFedが犯したアノ時の過ちなのかもしれません。

原油安に対し現状、フィッシャーFRB副議長やNY連銀のダドリー総裁をはじめ「成長にポジティブ」と前向きな姿勢を貫いています。FOMCメンバーが原油安にあまりに楽観的スタンスですが、思い起こせば今年初めの1月FOMCでは、エマージング市場への不安に言及せず株安を招いていました。現状は、あの当時を彷彿とさせます。

もうひとつ覚えておきたいのが、ダドリーNY連銀総裁のこの言葉。12月2日に利上げ過程では「金融市場の反応に左右される」と発言していました。未曾有の金融緩和からの船出ですから、Fedをけん制し売り仕掛けしてくる投資家がいてもおかしくはありません。

下記にある黒字の原油価格は、作成当時なので悪しからず。


(出所:Deutsche bank/Thomson Reuters)

原油安の二次的な影響も見過ごせない。ロシアやベネズエラなど、財政的な利益分岐点が他より高い産油国で社会不安が覆うリスクがくすぶります。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2014年12月12日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。