21世紀は本格的な高齢化社会を迎える。90歳、100歳の老人はもはや珍しくはない。世界に12億人以上の信者を有するローマ・カトリック教会総本山のバチカンでも高齢化は避けられない、というか、高齢者によって運営されている機構だから、その深刻さは一層大きい。
▲コンクラーベで、黒い煙をだすシスティーナ礼拝堂の煙突(2013年3月12日、オーストリア国営放送の中継から)
さて、フランシスコ法王は来年2月、新たに10人前後の枢機卿を任命する予定だ。バチカンのロンバルディ報道官が11日、明らかにした。ローマ・カトリック教会の現在の枢機卿数は208人で、そのうち次期ローマ法王の投票権を有する80歳以下の枢機卿数は112人だ。コンクラーベ参加数の上限は120人だ。
ただし、112人のうち、来年2月前に80歳を迎える枢機卿が2人いるから、コンクラーベ参加有資格者は2月の段階で110人となるから、フランシスコ法王は10人の枢機卿を新たに任命できる。新枢機卿の任命式は来年2月14、15日に開催される枢機卿会議で行われる。
ところで、枢機卿が参加するコンクラーベには年齢制限があるが、ローマ法王にはそのような年齢制限は基本的にない。ただし、前法王べネディクト16世が在位期間中に退位を表明したことで、ある一定の状況下では法王の退位も可能だったことが判明した。すなわち、フランシスコ法王もその気になれば前法王と同様にいつでも退位できるのだ。その際の退位理由も同じように、「健康理由からペテロの後継者として法王職を全うできなくなった」ということになる。
「フランシスコ法王時代は昨年3月スタートしたばかりだ。退位など縁起でもないことを書かないでくれ」と指摘されるかもしれない。しかし、忘れないでほしい。フランシスコ法王は76歳の時に法王に選出され、今月17日に78歳だ。58歳の若さで法王に任命され、27年間の長期政権を維持した故ヨハネ・パウロ2世とは違う。べネディクト16世の場合、法王に就任した時、78歳だった。同16世の場合は次期法王へのショート・リリーフ役が期待されていた。本格的なローマ法王が選出されるまでのつなぎ的役割だったのだ。フランシスコ法王の場合、本格的な法王として選出されたのだ。
問題は、ブエノスアイレス大司教から本格的な法王として選出された時、ローマ法王は既に76歳の高齢だったという事実だ。だから、新法王が選出された直後から次期法王の選出について,バチカンは常に準備態勢を維持しなければならないのだ。ここにバチカンの機構的欠陥があるわけだ。
フランシスコ法王は就任直後からバチカンの改革を訴えてきた。興味深い改革案の一つとしては「ローマ法王の地位の見直し」だ。ローマ法王を東方正教会の精神的指導者(エキュメニカル総主教)バルトロメオス1世のように象徴的最高指導者とし、実質的行政権を各国教会の司教会議に委ねるという改革案だ。換言すれば、バチカンの非中央集権化だ。
この改革が実行できれば、ローマ法王の健康問題はもはや大きなテーマとはならない。職務が停滞する懸念もないのだ。残念ながら、このウルトラCの改革案には反対が余りにも強いのだ。
編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2014年12月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。