スイス、異例のマイナス金利を導入 - 米株高をサポート? --- 安田 佐和子

アゴラ

スイス国立銀行(SNB)は、金融政策決定会合を開き予想外に中銀預金金利をマイナス0.25%に設定した。欧州中央銀行(ECB)が6月に導入してから、半年後に続いたかたちだ。マイナス預金金利導入を受け、政策金利にあたる3ヵ月物ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)目標レンジを従来の0.0%-0.25%から、マイナス0.75%—プラス0.25%へ拡大させ下限はゼロ以下する。1月22日から施行を開始する予定だ。


声明文では「過去数日にわたり、数多くの要因により安全資産への投資需要が高まっていた」と指摘。その上で、マイナス金利導入はスイスフラン投資への魅力減退を促す説明していた。マイナス中銀預金金利は自由に出し入れできるサイト・デポジット(site deposit)が対象となり、足元で1000万フラン(1020万ドル)に適用される公算。前週末時点の商業銀行の中銀への預金残高は、3130億フランだった。

スイスフランの上限である1ユーロ=1.20フランは、今回も「断固として防衛する」との文言を繰り返した。

UBSのジェフリー・ユー為替ストラテジストは、今回の決定を受け「短期的にフラン高を抑制しうる」とコメント。今後もフラン高が続くようであれば、マイナス幅を拡大させる可能性を点灯させている。BNPパリバのイブリン・ヘルマン欧州エコノミストは「裏を返せば、SNBの介入が12月に異例な水準に達したということ」と論じ、2015年1月7日公表の介入動向に注目すべきとした。

——ECBが国債買い入れを含めた量的緩和(QE)を開始する見通しである半面、米連邦公開市場委員会(FOMC)は12月こそハト派寄りだったとはいえ出口路線をひた走っていることは事実。今後も一段とユーロ安圧力がかかってくること必至で、SNBとしては予防策を打つしかなかったのでしょう。SNBの前例のない挑戦は続きます。

本日のダウ平均は421ドル高と2011年12月以来で最大の上げ幅を遂げ、FOMCが開催された前日と合わせると約700ドル高に至ります。S&P500の本日の上昇幅も、2013年1月以来に。本日の米株高には、時間外取引からSNBがサポートしたと考えられます。

なぜなら、欧州時間入りにかけS&P500先物は急伸。

(出所:CNBC)

時差の都合からFOMC明けのラリーに乗り遅れた欧州の市場参加者が、時間外取引で買いで押し寄せてきたのでしょう。SNBの政策決定も加わって投資家に米株買い寄りのアセット・アロケーションを促した可能性もあり、SNBの決定は米株ブルに朗報だったことは間違いありません。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2014年12月18日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。