アベノミクスの結果は全敗に近いが、それでも「民主党政権よりましだ」という人がいるので、内閣ごとのGDPを計算してみた。
実質GDP(兆円・左軸)と成長率(出所:IMF)
この図は各内閣の実質GDP(最後の年)と成長率をみたものだが、小泉内閣(2001~6)の7.5%が際立っている。麻生内閣(2008~9)の-3.9%はリーマンショックという外的要因があるので、すべて日本政府の責任とはいえない。民主党政権(2009~12)は、もとが最悪のレベルから出発したという幸運はあるにせよ、3年間で5.7%の成長を実現している。
それに比べて第2次安倍内閣は2.5%だ。この数字はIMFの暫定推計なので、今年の成長率がゼロになると1.5%になる。唯一その成果といえるのは、日経平均株価だ。民主党政権では日本株が過小評価され、悲観が悲観を呼ぶ「協調の失敗」に陥っていたので、アベノミクスの偽薬効果はきいたと思われるが、その効果の多くは円安による外人買いで、ドル建てでみると150ドル前後で頭打ちだ。
ドル建て日経平均(出所:会社四季報)
リフレ派の「期待インフレ理論」によると、株価が上がると資産インフレになって人々がものを買うようになり、期待インフレ率も上がることになっているが、あいにく日本株を買ったのは外人で、日本の家計の株式保有は1割程度なので、そういう「好循環」は生まれなかった。
総じていうと、安倍政権の経済的パフォーマンスは民主党政権より悪い。この最大の原因は、2年で50%近いドル高で、企業や家計のコストが上がったことだ。今年は原油安で多少はましになるかもしれないが、円安は続くので、ゼロ成長に近いだろう。株価もこれ以上あがる要因がないので、150ドル前後にとどまるだろう。
安倍首相は「GDPを大きくすることで累積債務の比率は小さくなる」という意味不明の発言をしているが、2020年にプライマリーバランスを黒字化するには、7%ぐらいの名目成長率が必要だ。上の数字を見て、それが現実的な政策目標かどうか、冷静に考えてほしい。