オカムラ議員の“危険な役割" --- 長谷川 良

アゴラ

独ザクセン州ドレスデン市で1月5日、反イスラム教、反移住者を訴える「西洋のイスラム教化に反対する愛国主義欧州人」( “Patriotischen Europaer gegen die Islamisierung des Abendlandes”、通称・Pegida運動)の慣例の月曜日デモ行進が行われた。主催者側によると、約1万8000人が集まった。ドレスデン市以外からも参加者が集ったという。参加者は、Pegida運動に対し批判的なメディアに不満を表明する一方、Pegida運動を「外国人排斥運動」として批判するメルケル首相に抗議する声が多く聞かれた。


▲チェコ上院議員のトミオ・オカムラ氏(ウィキぺディアより)


一方、Pegida運動に抗議するデモ集会が首都ベルリン、ケルン、ハンブルク、シュトゥットガルト、ロストック市など各地で開かれた。ケルン市では同日、Pegida運動への抗議意思表明としてケルン大聖堂はその照明を消した。独週刊誌シュピーゲル電子版によると、ケルン市では約500人がPegida集会に参加、一時間のデモ行進後、解散したという。

ドイツ国内ではPegida運動に対し政治家ばかりかメディアもその評価が分かれているが、隣国チェコでは父が日本人、母がチェコ人の親を持つ、実業家の上院議員トミオ・オカムラ氏(42、岡村富夫)が自身のフェイスブックで反イスラム教を国民に訴えていることがこのほど明らかなった。オカムラ議員は極右政党「直接民主主義の夜明け」の党首だ。

シュピーゲル誌によると、オカムラ氏は国民に反イスラム教の意思表示として、犬と豚を連れてイスラム寺院周辺を散歩しようと呼びかける一方、イスラム教徒が経営する店では買物しないように呼びかけている。同氏は「ケバップ1個を買えば、それだけイスラム教徒のブルカが増える」と述べている。オカムラ氏はベーメン南部のユダヤ人強制収容所の存在を否定して物議をかもしたことがある。

第2次世界大戦前までは欧州有数のユダヤ社会があったポーランドで今日、ユダヤ系住民はほとんどいなくなったが、反ユダヤ主義が社会では今なお根強い。同じことがチェコでもいえる。同国の人口は約1051万人(2013年12月末現在)で、そのうちイスラム教徒数は2万人に過ぎないが、彼らは国民の日常生活の不満や憎悪の対象となってきている。その扇動役をオカムラ氏が買って出てきたのだ。危険な役割だ。


編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2015年1月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。