安倍晋三政権は米軍普天間飛行場の辺野古(名護市)移転に反対して沖縄県知事に当選した翁長雄志氏に対して徹底した無視、冷遇の姿勢を取っている。
上京した翁長知事に対して首相や閣僚は面会しないし、自民党沖縄振興調査会にも呼ばなかった。
また、安倍首相が13年末に辺野古移設を進める狙いから21年度まで毎年3000億円台を確保する方針を表明していた沖縄振興費についても、15年度は3000億円台は維持するものの、予算執行の現状を厳しく査定し、未執行分は削減するという。
その一方で、普天間飛行場の辺野古移設のための経費として1000億円以上を計上する方針を固め、沖縄県知事戦や先の総選挙で自民党が敗戦したのも構わず、政府の方針として辺野古移設を粛々と進める構えだ。
要するに、翁長知事及び同知事を支持する沖縄県民へのアメを削減、厳しいムチを入れる方針をとっているわけだ。
政府・自民党の姿勢、言い分をわかりやすく言えば、こうだろう。
<米軍基地が沖縄に集中している現状に対しては、つねに感謝と同情、済まない気持ちを抱いている。だから、仲井真弘多前知事が13年末に辺野古埋め立てを承認したことを受け、大幅な沖縄振興の予算を計上した。国民全体の沖縄住民への気持ちと受け取ってもらいたい>
<だが、翁長知事と同知事を支持する沖縄県民は、あくまでも辺野古移設に反対と言う姿勢を鮮明にしている。政府としては、これ以上の譲歩はできない。米軍は辺野古基地を必要とし、日米同盟維持や日本の地政学的状況からしても辺野古の基地は必要だ>
<たとえ、沖縄県民の多数がイヤだと言っても、日本全体の安全保障のために辺野古は必要なのだ。沖縄県民の意思を無視する気はないが、日本政府としては沖縄という地元の意思よりも日本全体の安全保障を優先せざるをえない>
沖縄振興予算の削減は安倍政権の本意ではないだろう。沖縄の反日本勢力に揺さぶりをかける狙いだろう。「これ以上の日本政府への反対行動は許さない。厳しく対処する。辺野古移転は沖縄県が反対しようと、政府は断行する。翁長知事らが態度を改めてくれれば、いつでも予算は満額回答する」といったところであろう。
だが、翁長知事やその支援者が簡単に態度を改めることは困難だ。したがって、これ以降、政府と沖縄県のにらみ合い、ガマン比べが続くだろう。
中国はここを先途と沖縄県に入り込み、日本本土との離間を図るべく、反日勢力に対する経済的、政治的な支援を強めるに違いない。沖縄の独立、中国への再朝貢国化を視野に入れながら。
もともと琉球国として江戸時代まで中国に朝貢していた過去を持つだけに、沖縄が独立に傾斜することは夢物語とは言い切れない。それは日本はもとより米国にとってもあってはならない事態だ。
したがって、日本政府としてもあまりに露骨な冷遇、厳しいムチ入れはできない。そこに政府と沖縄県とのガマン比べ、駆け引きがある。
ただ、私は政府と沖縄との関係がここまで来た以上、これまでのようなオブラートに包んだような対応をせずに、はっきりと「日本政府の方針に従うのか、どうなのか」という態度で臨むことは悪くないと思う。
沖縄県は日本本土との結びつきを大事にした方が良いことははっきりしている。民主主義のない中国など本来、選択肢に上るはずがない。
しかし、沖縄は日本を揺さぶり続け、明らかに行き過ぎた要求を日本に付きつけ続けてきた。「これ以上は無理だ」と突っぱねることは長い目で見て、沖縄県民に対しても良いことだと思う。多少の荒療治は致し方がない。
安倍政権としてもいつまでも翁長知事を冷遇し、ダンマリを決め続けるわけには行かない。時期を見て、日本を代表する政権としてと沖縄県知事とホンネをぶつけあうべきである。
安倍・自民党政権は衆院選で圧勝、日本全体の民意の支持を受けている。一方、翁長知事は沖縄県民の多数派の支持を受けている。
つまり安倍政権と翁長知事(沖縄県庁)の論戦は、日本国民と沖縄県民とのホンネトークとも言える。そして、今ホンネを激しくぶつけ合う時期が来たのである。それがうまく行かず、平行線に終わったらどうするか。
安倍政権は日本全体を優先し、辺野古移転を断行するしかあるまい。そこまで行かずに、どう軟着陸させるか。冷戦の行方、その後訪れるであろうホンネトークの行方を見守りたい。
編集部より:この記事は井本省吾氏のブログ「鎌倉橋残日録 ~ 井本省吾のOB記者日誌」2015年1月9日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった井本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は鎌倉橋残日録 ~ 井本省吾のOB記者日誌をご覧ください。