全米リアルター協会(NAR)が発表した米12月中古住宅販売件数は年率504万件となり、市場予想の508万件に届かなかった。ただし、6ヵ月ぶりの低水準だった前月の492万件(493万件から下方修正)を2.4%上回る。過去6ヵ月間では、4回目の増加を示した。前年比では3.5%増と、3ヵ月連続でプラス圏を維持。10月の2.1%(速報値ベース)より伸びを強めた。
内訳をみると、一戸建てが前月比3.5%減の447万件。少なくとも過去6ヵ月間で最低となった前月から、改善した。複合住宅は5.0%減の57万件となり、2ヵ月連続で減少している。
4大地域別では、2地域で増加。11月のゼロから改善している。今回は西部が9.8%増の112万件と3ヵ月ぶりに増加に転じたほか、南部も3.8%増の217万件と前月の減少分を打ち消した。一方で、北東部が2.9%減の66万件と2ヵ月連続で減少し、中西部も3.5%減の109万件だった。
在庫件数は、前月比11.1%減の185万件と3ヵ月連続で減少。少なくとも10ヵ月ぶり低水準だった。在庫が大幅に減少した一方で販売が増加したため。在庫相当は4.4ヵ月となり11月の5.1ヵ月を大幅に下回った。金融危機以降で最も短期化した2014年1月の4.3ヵ月に近づいている。中央価格は前年比で6.0%上昇の20.95万ドル。9ヵ月連続で20万ドルに乗せ、前月比でも1.1%上昇し6ヵ月ぶりにプラスに転じた。売り出し平均期間は66日と、前月の65日から延び足元最短だった2013年6月の37日を上回った水準を保つ。
中古住宅販売件数、2008年以前の水準回復はほど遠い。
(出所:JPモルガン)
買い手の内訳は、以下の通り。
・差し押さえ物件 8%>前月は6%、前年同月は10%
・ショートセール(担保残債価額よりも安い価額で販売する住宅) 3%=前月は3%、前年同月は4%
・差し押さえとショートセールを合わせた不良債権物件 11%>前月は9%、前年同月は14%
・新規購入者 29%<前月は31%、前年同月は27%
・現金での購入者 26%>前月は25%、前年同月は32%
・住居用ではなく投資向け 17%>前月は2ヵ月連続で15%、前年同月は21%
2014年ベースでは前年比3.1%減の493万件。中央価格は不良債権物件の減少と景気回復を背景に、5.8%上昇の20万8500ドルと2007年以来の高水準だった。NARのローレンス・ユン米エコノミストは、結果を受け「年初は(大寒波を背景に)弱いスタートにとどまったが、夏にかけ在庫増加に合わせ切り返し2014年の幕引きには改善を示した」と評価した。
JPモルガンのダニエル・シルバー米エコノミストは、12月の内容に対し「仲介料が減少したようにみえ、住宅市場の需要が減退しつつある可能性を示す」と慎重な見方を寄せた。
—-以上、12月中古住宅販売件数は一戸建てが回復し前月を上回ったとはいえ、伸びはイマイチ。低金利の恩恵に浴しながら、新規購入者が低下する体たらくです。価格の上昇と在庫不足が原因とみられますが、一連のリストラ情報を踏まえると投資向け購入者の下支えがない限り中古住宅販売件数が伸び悩むリスクを点灯させたといえるでしょう。米1月NAHB住宅市場指数の鈍化、米12月住宅着工件数での在庫余剰懸念も、気掛かりです。
(カバー写真:Kristen Wheatley/Flickr)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2015年1月23日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。