ドン・ホール、 クリス・ウィリアムズ監督「ベイマックス」を観ました。
ディズニーにチケットをいただいたので、そのまま、マーベルの原作も知らず、予備知識もなく、油断して観に行きました。ほんわかしたロボットと少年のツーショット絵ばかり見ていたので、癒し系の感動物語だと思っていました。
そしたら、「死んだ兄の復讐に燃えるヒーロー戦隊アクション」やないかい! 面白かった!
マーベルのアメコミ「BIG HERO 6」をディズニーのアニメに翻訳した作品なんですよね。てゆーかBIG HERO 6という原題をみて、身構えておかなければいけないのでした。
原作は日本のスーパーヒーローチームを描いたもので、日本ポップカルチャーへの愛が満載。主人公のヒロ、兄のタダシ、そのヘアスタイルやファッションをはじめ、無表情なベイマックスの顔は日本の鈴をかたどったものだし。
しかし、ロボット、大学、家族、復讐、友情、アクション、スピード、ファンタジー・・大人もうなる雄大な構成と濃密な内容はさすが。日本には作れまい。打ちのめされる充実度です。
どこまでが創作で、どこまでがオマージュなのでしょう。
舞台はサンフランソウキョウ。都市を見下ろすとリアルなサンフランシスコが現れつつ、街に降りると新橋や新宿の風情です。カニ道楽やづぼらやの看板は愛嬌です。でも、ことさらに提灯や鳥居が現れると、1935年「ベティの日本公演」がみせたデフォルメされたアジア像を想起させるではありませんか。
5人のレンジャーと兄の形見のロボット「ベイマックス」のチーム。これは、ゲキ・ゴウシ・ダン・ボーイ・メイに、ゲキの兄ブライが加わった「恐竜戦隊ジュウレンジャー」を想起させるではありませんか。
ベイマックスが自分の命を投げ出してヒロを救うシーン。ジャイアントロボがU7草間大作少年の命令を振り切り、ギロチン帝王と共に散って地球を守るシーンを想起させるではありませんか。五星戦隊ダイレンジャーで、神風大将がテンマレンジャーの身代わりになって散るシーンを想起させるではありませんか。
すみません。そういう感想は専門のみなさんにお任せします。
劇場でぼくが前のめりになったのは、自分のしごとにシンクロしたからなんです。
タダシは大学でロボットの研究開発を進め、ヒロは入学を希望します。悪のビジネスの手に落ちた小型ロボティクスに、サイボーグ技術で立ち向かいます。研究開発、人材育成からビジネス創生へ。竹芝の「CiP」は、それをできるようにするためのプロジェクト。
ロボット開発環境はMIT、ハーバード、CMU等を参考にしたそうです。大学のキャンパスはスタンフォード大学と日本の建築様式を掛け合わせたといいます。こんな環境を作りたいなぁという視点で見つめてしまいました。
ヒロたちはメカで身体を拡張します。オタクな大学生がマシンを装着して、超絶パワーを身につけ、陸海空を駆け巡ります。これぞ「超人スポーツ」が実現したいこと。われらが超人スポーツ委員会では、マッドな科学者たちが超人スポーツ開発にしのぎを削っています。
トウキョウで、実現してみてくれよ。
この作品にそう後押しされた、と勝手に解釈してみます。
編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2015年1月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。