マンモスゾウの復元は可能なのか

アゴラ編集部

マイケル・クライトンの傑作小説『ジュラシック・パーク』(Jurrassic Park)には、タイトルに入っているジュラ紀の恐竜ばかりでなくティラノサウルス・レックスなど、白亜紀の恐竜も出てきます。この小説の立役者で重要なのは、琥珀に閉じ込められた「蚊」です。恐竜が生きていた時代の蚊は、恐竜の血を吸っていたかもしれません。小説では、蚊が吸った恐竜の血からDNAのサンプルを採取して現生の両生類などのDNAと組み合わせ、ワニの卵と人工授精させていました。ちなみに、背中に菱形の盾が並んでいるステゴサウルスはジュラ紀の恐竜です。


もちろん、琥珀の中に閉じ込められているとはいえ、1億年近くも前の恐竜の血液は、宇宙線などによってそのDNAが切断されていることが考えられます。自然状態で500年ほども放っておくと、DNAの情報の約半分が失われるらしい。ただ、宇宙線が減衰する地中深く埋もれていた琥珀なら可能かもしれません。小説を原作にした映画では、探鉱のような場所から琥珀を掘り出している様子が描かれていました。

表題の記事では、約1万年前に死んだマンモスゾウのDNAと現生のゾウのDNAから、マンモスゾウを現代に復元させるプロジェクトは失敗するだろう、という米国の研究者の意見を紹介しています。日本では、ロシア共同マンモス復元プロジェクトが岐阜県や近畿大学などの研究者によって進められています。この計画では、いわゆるSTAP細胞騒動にも登場した山梨大学の若山照彦教授の成果を参考にしているらしい。若山教授は、零下20度で16年間、冷凍保存されていたマウスの細胞核を利用してクローンマウスを作り出すことに成功しています。

マンモスゾウは、ロシアのシベリアから掘り出された個体の細胞核を使いますが、シベリアの凍土でいったん凍結された細胞の核は利用に堪えないほど破壊されています。放射線だけではなく、こうした保存環境もDNAの復元に大きな影響を与える、というわけ。表題記事の米国研究者も、放射線や凍結された環境などでDNAは破壊され、難しいだろうと言っている。その代わり、これまでの研究により、DNAのプリミティブな塩基配列の繰り返しである「CRISPR(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat、クリスパー)」のような情報から、現在のゾウとマンモスゾウの遺伝子の違いがわかっているそうです。それは14カ所あり、皮下脂肪や耳の大きさ、長い体毛など、マンモスゾウの特徴になっている。これらの遺伝子の違いが解明され、現在のゾウの遺伝子を操作できれば、過去のDNAをいじらなくてもマンモスゾウの復元は可能、ということでしょう。


ハーバード大学のジョージ・チャーチ教授は、マンモスゾウのDNAが再び活用されることはないだろう、と言っている。via;Wiki Commons/FunkMonk

INTERNATIONAL BUSINESS NEWS
Bringing woolly mammoths back by cloning DNA ‘will not happen’


100 million roses grown for Valentine’s Day produce 9,000 metric tons of CO2
inhabitat
よく植物は二酸化炭素を吸収する、と言われていますが、正確に言えば植物も呼吸をし、酸素を消費して二酸化炭素を出している一方で光合成をする場合に限り二酸化炭素と日光と水を使ってエネルギーを作り出します。植物では、光合成で使われる二酸化炭素のほうが、呼吸による二酸化炭素排出量より多いので見かけ上、二酸化炭素を吸収するように見えるだけです。この記事では、バラの花が大量の二酸化炭素を排出している、と書いている。これは栽培されたり生産地から消費地へ運ばれる過程でのこと。バレンタインデーにバラの花を贈り合う、というのは欧米の習慣のようです。

親子で過ごす時間、子どもの言語理解と関連脳領域に影響-東北大
医療NEWS
東北大学の研究チームが興味深い研究リリースを出しました。表題の通りですが、とりわけ幼児が発達期に親と一緒に過ごし、触れあうことが重要とのことです。これまでは、子どもの大脳が発達中期に灰白質量の減少を示すことや親からの言語的な虐待などが子の言語機能の低下などと関連づけられてきましたが、逆に健常な親子関係についての研究はなかったらしい。今回の研究は、健常な子を対象にして知能検査やMRI検査を実施。その結果と親と子が一緒に過ごす時間との相関関係を調べたそうです。予見的には当たり前のような研究ですが、こういうのは改めて調べてみる、という態度が重要です。

不足するとメンタルヘルスへのダメージが大きい9つの栄養素
Paleolithec Man
精神性の疾病については、最近、いい薬が出てきたせいか、薬に頼る処方が一般的になっているようです。しかし、この記事に書かれているとおり、基本的にはバランスの取れた食生活がその予防には効果的。野菜や魚類、ビタミン、ミネラルなどをなるべく加工食品以外から摂取するように心がける。また、ストレスを溜め込まない生活も重要です。

How to Quit Like Jon Stewart
Inc.
以前、日本の『CNN』でもオンエアされていた米国の政治風刺番組『The Daily Show with Jon Stewart』ですが、看板キャスターだったコメディアンのジョン・スチュワート(Jon Stewart)氏が引退することを表明し、米国内のネット上で大きな話題になっています。日本で言えばさしづめテレ朝の『ニュースステーション』の久米宏氏が辞めるときのような感じ。米国のテレビキャスターといえば、ラリー・キング(Larry King)氏ですが、こちらのCNN『ラリー・キング・ライブ』(Larry King Live)はまだ続いています。ただ、米国のテレビ界もネット時代に入り、世代交代の時期にきているのかもしれません。

スチュワート氏が降板することを告げる『The Daily Show with Jon Stewart』のHP。


アゴラ編集部:石田 雅彦