――既存の最終処分では、仮に地殻活動で廃棄物を収めた容器から廃液などが漏れても、人間が居住する環境に届くまで非常に長い時間がかかるので、事実上影響はないとの考え方にも立っているはずです。
今田「その考え方は甘い。地下深くの微生物に放射線が作用してその微生物を取り込んだ別の生物が地上に出てくるなど、人間界に及ぶ可能性はいろいろ想定できる。また人間のエゴで環境を汚していいのかという問題もある」
今田氏は社会学者とはいえ、東工大に勤務していたのだから、科学者としてこの「地下深くの微生物」を具体的に同定する責任がある。地下300mで放射能に汚染されて生き延び、他の生物の体内に蓄積されて地上まで上がってくる生物とは何か。「原爆実験で怪物ができる」という都市伝説はゴジラのころからあるが、まさかいい大人が「放射能エイリアン」を信じているわけでもあるまい。
科学的には、バークレーのムラーのいうように「核廃棄物の処理は技術的には解決ずみである。人々の恐怖は誤った情報と政治的宣伝によるものだ。特に恐れられているプルトニウムは、水に溶けないので地下水に漏れ出しても害はない。それ以外の核廃棄物も、100年後にはほぼ無害になる」というのが世界の通説である。
「暫定保管」の実態は現在の中間貯蔵と変わらない。地下300mの地層処分が危険で、地上に置く暫定保管が安全だという根拠は何もない。今田氏は知らないのかもしれないが、最終処分場はある。プリンストン大学のvon Hippelなども指摘するように、六ヶ所村の再処理をやめて最終処分場にすればいいのだ。
このように学術会議を乗っ取った反原発派が、科学的根拠のない「放射性廃棄物こわい」というホラーストーリーを仕立てて「廃棄物が片づかない限り原発の再稼動を許可するな」などという法的根拠のない提言をするのは、学術会議の学問的名声と中立性を傷つけるものだ。