42.195キロ --- 岩瀬 大輔

アゴラ

ここのところ、自分がアラフォーであることを実感させられる機会が増えている。そこで、少し前から、健康増進と体力増強を目的として、マラソンをはじめた。早朝、出勤前に家の周りで汗を流したり、平日の夜に会社の仲間と皇居を走ったり、週末の午前中にこだわりのコーヒースタンドを目指して少し遠出をしてみたり。それなりに走り込んだこともあり、10月の軽井沢ハーフマラソンを踏み台に、11月に河口湖で初のフルマラソンに挑戦し、なんとか完走することができた。


この週末、3万人以上がエントリーした東京マラソンに初参加した。Facebookのタイムラインには参加した友人や彼らへの各種応援メッセージが多く並んでいた。ちなみに豆知識だが、東京マラソンはランナーの数でいうとニューヨーク(5万人)、シカゴ(4.1万人)、パリ(3.8万人)、ロンドン(3.6万人)に次いで世界第5位の規模の大会とのこと。メモメモ。

テレビでも報道されていたように、今年は厳戒な警備体制が敷かれていた。スター ト地点に向かうランナーは空港同様のセキュリティゲートを通過すべく、大行列をなす。ここで持ちこんだ手荷物は、何十台と並んでいる運送会社のトラックに 番号順に積まれ、スタートの都庁からゴールである東京ビックサイトに運ばれるわけだ。日本の高度なロジスティクス能力をおしみなく発揮していると感じたが、海外のマラソンではどうされているのだろう?ちなみに、預ける荷物に折りたたみ傘が持ちこみ禁止だとは事前に教えて欲しかった。お気に入りのグリーン の傘をゲートで放棄することにならなかったのに・・・また、あとからテレビで知ったのだが、「ランニングポリス」ということで、元駅伝ランナーの警官の方 も伴走されていたとのこと。

マラソンを走ったことがある人なら分かると思うのだが、沿道の応援は本当に力をもらえる。見ず知らずの人々に「がんばって!」と笑顔で叫んでもらい、子供たちとハイタッチをし、差し入れの小さなチョコレートを受け取る。30キロ以降は鎮痛スプレーの貸し出しがなんとも嬉しかったりする。これだけ短時間で、これだけ多くの人に「ありがとう」という言葉を発する機会もないのではないか。少し大げさにいえば、私たちが日ごろ、いかに多くの人に支えられながら生きているかを実感させられるきっかけになる。お題目だけでなく、本当に「東京がひとつになる日」であると、走ってみて感じる。

加えて、今回あらためて感じたのは、テクノロジーによってランナー以外の方々の「参加」のあり方が変化しつつあること。特設HP上ではランナーたちの5キロ毎のタイムを見られるほか、あらかじめ登録しておくと10キロ毎に自動的にFacebookにタイムがアップされていくサー ビスもあり、それに「いいね!」することが声援となったりする。途中でスマホを使って応援に来ている同僚と待ち合わせ場所を確認しあうこともできる。昨年 参加した富士山マラソンではリアルタイムで各ランナーの軌跡を追うことができたので、海外にいる友人からも「ずっと進捗を確認して、心の中で応援してたよ」とのメッセージをもらったりもした。3万人のランナー、1万人のボランティア、そして多数の応援者を繋いでいるのは、ネットのテクノロジーであり、そこからたくさんの勇気をもらうことができた。途中、予期せぬ膝痛に見舞われて走れなくなったが、最後は足を引きずりながら歩き、なんとか「完走」することができた。

そういえば、会長の出口がよく「生命保険はマラソンのような長期の事業、ライフネット生命はまだ競技場を出たばかり」という喩えを使う。42kmはとても長い距離だ。快調に飛ばすときもあれば、思いがけない痛みでペースを落とすこともある。それも含めて、長い、長いレースを走り抜くことが大切だ。大きな目標に向かって、僕らのレースも、まだ始まったばかりだ。

東京マラソンにボランティアとして参加したライフネット社員の興味深い体験談はこちら


編集部より:このブログは岩瀬大輔氏の「生命保険 立ち上げ日誌」2015年2月24日の記事を転載させていただきました。
オリジナル原稿を読みたい方は岩瀬氏の公式ブログをご覧ください。